代官山の丘に、複数の箱が重なり生まれた建築「カシヤマ ダイカンヤマ」

  • 文:海老原光宏
  • 写真:岡村昌宏(CROSSOVER)
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箱がランダムに積み重なったようなユニークなデザイン。大きく取られた開口部から、気持ちいい自然光が各フロアに注がれる。

建設ラッシュに沸く東京。デザインとコンセプトで目を引く、世界に誇りたい建築を、Penがセレクトする。ここで紹介するのは、「カシヤマ ダイカンヤマ」だ。

代官山駅のなだらかな丘陵地に、ひと際目を引くユニークな建築が誕生した。ネンド(nendo)の佐藤オオキが建築および内装デザイン監修を務めた、飲食やファッション、ギャラリーからなる複合施設カシヤマ ダイカンヤマだ。文具からラグジュアリーブランドまで世界中から引っぱりだこのネンドによる、国内初の大規模商業建築である。建築デザインは、丘をイメージしていくつもの箱を積み重ねた。箱をずらしながら重ねていき、代官山の丘のラインに沿うように計画している。ずれにより生まれた隙間には、横軸ではテラスを設置。縦軸では開口を取り自然光が入る仕組みだ。

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最上階5階のシックなバー。4階のレストラン「コトー」と同様に、色気を感じさせるゴールドをアクセントカラーに用いている。

インテリアでは、箱が重なった部分に注目を。たとえば地下1階の床では箱ごとに異なる玉砂利を敷いているが、重なった部分にはそのふたつを混ぜた玉砂利が使われている。また、外装のデザイン要素を内部にも取り込み、デッキや外壁の仕上げをインテリアに導入。家具も、共通する素材で一体感をもたらしている。

建築、インテリア、家具それぞれの要素が重なり合い柔軟に融合。さらに複数の箱によって巡り歩く楽しさも加わった。上質かつ、飽きさせることのない新鮮な空間が完成した。

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服・食・デザインの箱が、積み重なる

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箱がずれた部分にはデッキテラスを設置。こうした小休止できるスペースは日本の商業施設では珍しい。

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4階の須賀洋介監修によるフレンチレストラン「コトー」。コトーはフランス語で丘の意味。絶妙な高級感の演出は、海外のプロジェクト経験が多いネンドだからこそ実現。
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大理石を基本に用いた3階物販エリアの「マーケット」。カジュアルな2階に比べてシックなアイテムが揃う。ガラス什器にも大理石模様をプリントしている。

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1階にはギャラリーがある。2019年10月13日まで、フランスのファッションデザイナー、ジャン=ポール・ゴルチエの展覧会が開かれた。

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半地下に設けられたメインエントランスは天井が高く、外光がたっぷりと差し込む。

カシヤマ ダイカンヤマ

デザインアーキテクト : ネンド 2019年
住所:東京都渋谷区代官山町14-18
TEL:03-5784-1287
www.kashiyamadaikanyama.com

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※Pen2019年11/1号「TOKYO 建築案内」特集よりPen編集部が再編集した記事です。