エルメス、8年ぶりに蘇った腕時計の「カレ」
カレ アッシュ(左)
自動巻き、SS(ポリッシュとマイクロブラスト仕上げ)、ケースサイズ38×38㎜、ギョーシェ彫りのブラックダイヤル、ファセット加工の針とインデックスの数字、パワーリザーブ約50時間、カーフ革ストラップ、3気圧防水。¥837,000
アルソー クロノ チタン(右)
自動巻き、チタン、ケース径41㎜、クロノグラフ、スモールセコンド、ブラック文字盤、日付表示、60秒・30分・12時間計、パワーリザーブ約42時間、エンボスカーフ革ストラップ、3気圧防水。¥623,160
SIHH初出展で、否応なく注目が高まったエルメス。期待の新作には「カレ アッシュ」がラインアップされた。そもそもは2010年、フランスのデザイン界の大御所で、建築家でもあるマルク・ベルティエが手がけた腕時計である。エルメスの「カレ」といえば世界の女性が憧れる正方形(カレ)のスカーフでもあるが、その形と名を引き継ぐ。
その力強いデザインのメンズウォッチが、装いを新たにした。方形の輪郭はそのままに円形を大胆に引き入れ、さらに相似形の内円をギョーシェ彫りの垂直と水平線で四分割する、幾何学的ダイナミズムが斬新だ。アプライド仕上げのアワーマーカーにはゼロを加えたアラビア数字、秒針とカウンターには振り子とコンパスのインスピレーションを加え、デザインはさらに躍動するものに展開した。8年前はジラール・ペルゴ社のムーブメント採用で本数限定だったが、今回は待望のエルメス・マニュファクチュール搭載で定番入り。ムーブメントには「H」の連続模様があしらわれている。
馬具の鐙(あぶみ)をモチーフとするコレクションに登場したのがチタン製ケースのクロノグラフ。
その「アルソー クロノ チタン」は、ブラックダイヤルのスポーティさが、ギャロップする馬をイメージした流麗な数字書体に、新たな精悍さを添える。
イメージしたのは、21世紀の探検家。
「カレ アッシュ」をデザインしたデザイナーのマルク・ベルティエ。SIHHの会場でそのクリエイションについてこう語った。
「新作のカレ アッシュは、2010年にメゾンの173周年記念として173本限定として発売したモデルを進化させたものです。最初に作った時は、ミニマルで控えめでエレガントな時計としてデザインしました。それから約10年が経って、今回は男性向けの時計とは何かをまず考えたのです。男性の腕時計というのは、しばしば誰かしらヒーローをモチーフにします。F1のパイロットだったり映画俳優だったり。時にはスポーツ選手だったり。そんな風にヒーローをモチーフにすることが多いでしょう」
今回の時計のために彼が考えたヒーロー像とは、旅行者であり、探検家だという。「しかも詩人や作家のように文化的な経験が豊富であり、テクノロジーの進化を享受できるのが21世紀の探検家なのです。今回のモデルは以前よりスポーティになって、輝きも増し、さらに魅力的になりました」