2016年のSIHH、革新的な機構によって優れた音響効果を実現したミニッツリピーター、「ロイヤル オーク コンセプト・スーパーソヌリ」を発表した「オーデマ ピゲ」。今年、2017年のSIHHのブースでは、その時計にちなんだインスタレーションを行いました。映像をつくり上げたのはフランス人アーティストの「GENER8ION」です。
昨年、オーデマ ピゲが本社を構えるスイス・ジュウ渓谷のル・ブラッシュを訪れた彼は、ミニッツリピーターの澄んだ音色、ル・ブラッシュの自然の音、そして時計づくりで生じるさまざまな“音”をサンプリングして、異なる4つの時刻を表現した、印象的な映像作品をつくり上げたのです。
上の動画はGENER8IONがル・ブラッシュを訪れ、サンプリングを行う様子など、作品の制作プロセスをまとめたものです。今回のSIHH会期中、オーデマ ピゲのブースを訪れたGENER8IONに、コラボレーションについて話を聞くことができました。早速そのインタビューを紹介しましょう。
—今回のコラボレーションは、対照的な要素が絡み合った非常に興味深いものです。機械式腕時計とエレクトロニックミュージックを結びつけているものとはなんですか?
GENER8ION 僕が思うに、時計づくりは基本的にすべてデザインすることです。しかも見た目だけでなく、すべてのパーツが正確に動くようにデザインすること。音楽をつくるプロセスも、いろんな要素を組み合わせていくので、時計づくりによく似ています。時計師と話をしていると、まるでアーティストと話をしているようでした。やり方は違っても、インスピレーションを受け、複雑でソフィスティケートされたものをつくる作業に、僕がつくるエレクトロニックミュージックとの共通点を感じました。
—ル・ブラッシュのオーデマ ピゲ本社を訪れたそうですが、どんなことに興味を惹かれましたか?
GENER8ION やはり音、時計の音ですね。時計師にとって音はとても重要で、時計にトラブルがあった時、それを音として知ることができるのですね。なにか問題があった時、時計師がムーブメントの稼動音を聞くことで、どんな問題かがわかる。音を問題発見のために使っているのです。また「スーパーソヌリ」では、すべてのチューニングを耳で行っています。専門教育を受けたミュージシャンがいるわけではないのに、とても正確にチューニングしてるのが興味深かったです。
—ル・ブラッシュの自然と時計づくり、そこにどのようなつながりを感じましたか?
GENER8ION もしあなたも時間があれば、必ず訪れるべきですね。僕も初めて訪れましたが、まずランドスケープがすごく印象的でした。それから、訪れたのは6月でしたが、一日過ごすあいだに5つの天気に出合う。しかもとても極端(笑)。よい天気だと思ったら嵐が来て、その後はすごく暑くなる。そう思ったらまた寒くなり……。あの自然は、そこに住んでいる人に大きな影響を与えていると思います。スイスの人々はとても物静かで、おとなしい。けれども対照的に自然はとても激しく極端ですね。そのことを実感し、オーデマ ピゲの時計づくりにこの環境が影響を与えていると感じました。
ー特にどんなところが影響を与えていると思ったのですか?
GENER8ION 時計づくりには、とても忍耐が求められます。ずっと室内にこもって作業をしなければなりません。ここでは冬のあいだは寒さが厳しく、建物の中で過ごさなくてはなりません。そういう環境で人々は誰にも邪魔されることなく集中し、きわめて複雑で正確なメカニズムを開発できるのではないでしょうか。
—いろんな音で作品を作られていましたが、オーデマ ピゲで一番印象に残った音はなんですか?
GENER8ION なんと言っても、「ロイヤル オーク コンセプト・スーパーソヌリ」のチャイムの音がすごく好きですね。それから、アーカイブの古い時計のチャイムも。ミュージアムで聞くことができましたが、あれだけの小さな部品から美しい音色が生まれ、しかもそれがいまでもきちんと動くというのがとても印象深かったです。そして、エングレーヴィングの機械の音もすごく好きです。「タッタッタッッ」と、パーカッションのよう。それがいつも変化していて、リズムになっています。凄くユニークなリズムで、今回のプロジェクトでもこれを音楽のスタートに使ったんです。
ケンゾーやルイ・ヴィトンなど、トップブランドのコレクション音楽も手がけるGENER8ION。彼の感性のアンテナは活躍するフィールドを軽やかに超え、優れた作品を生み出します。今回のオーデマ ピゲとのユニークなコラボレーションをぜひ体験し、楽しんでみてください。(文:Pen編集部)
上の動画は早朝、6時3分の音を映像化したもの。鳥のさえずりとシンクロするテンポの速い音楽で、ル・ブラッシュの一日の始まりを表しています。波形のビジュアルは「ロイヤル オーク コンセプト・スーパーソヌリ」の開発でも用いられた、“音”を解析するプログラムによりつくられたもの。
こちらの動画は10時33分の音を映像化したもの。川のせせらぎにスーパーソヌリのチャイムが重なり、そこから時計づくりのさまざまな音がつながっていきます。
一方こちらの映像は夕方の16時15分の音を映像化。一転して激しさを伴う音に、一日のうちでめまぐるしく変化する自然環境が表されているようです。それぞれの動画の始まりに流れるチャイムは、「ロイヤル オーク コンセプト・スーパーソヌリ」による、その時刻を知らせるためのチャイムの音色です。
連作を締めくくるこちらの映像は、ル・ブラッシュが帳(とばり)に覆われた、22時17分の音。虫たちの囁きに激しい嵐の音が重なり、波形の動きがめまぐるしく変化していきます。
●問い合わせ先/オーデマ ピゲ ジャパン TEL 03-6830-0000