1.ミニサイズ
モバイルアイテムの小型化に対応するように、文具の世界でもダウンサイジングが進んでいる。「小さくて、素材にこだわった高級感のある文具が増えています。腕時計が持ち主の個性を強く主張するように、ペンを持つ手の佇まいも、人柄や知性を表してくれる。日頃から携帯し、どこでも使えるミニサイズだからこそ、品質や性能にこだわる人が増えています。革製品や紙製品なら、システム手帳のジャンルでマイクロ5やミニ5と呼ばれる最小サイズがとても盛り上がっています」と清水編集長。
(左:プロッター)薄さと軽さを兼ね備えたミニ5サイズの5穴リングレザーバインダー。180度に開く一枚革のブライドルレザーに、マットシルバー仕上げのオリジナルバックプレートを装着。4.7インチのスマホ並みのサイズで、約80枚入りのリフィルメモパッドが収納可能。全4色。H12×W8×D1.5cm。¥8,250(税込)/プロッター TEL:03-5789-8058 (右:カヴェコ)9.5cmというコンパクトサイズで、ペンケースへの収納や持ち運びにも便利な「リリプット」。強度と耐食性に優れ、環境にも優しい鉛フリーの真鍮素材“エコブラス”を用いて、110年前の伝統的なモデルを復刻したノック式ボールペン。経年変化も楽しめる。¥9,350(税込)/デルフォニックス丸の内 TEL:03-3287-5135
2.ローズゴールド
美しい文具をもつことは日々の喜びにつながるが、SNSで気軽に発信できる時代は、“魅せる文具”という需要も高まっている。「ローズゴールドは女性だけでなく、男性にも似合う煌びやかで高級感のある色です。アクセサリーのような感覚で、この色を選ぶ人が多いですね。本来『かわいい』という言葉には『愛おしい』という意味の他に、『小さくて美しい』という意味もありますから」。写真映えする華やかさをもちながら、ジュエリーのような品のよさも兼ね備えたローズゴールド。人気はこれからも続きそうだ。
(左:カランダッシュ)手帳や胸ポケットに収まる、わずか97㎜のショートサイズの六角軸ボールペン「エクリドール XS レトロ」。繊細な線が交差する美しいギョーシェパターンの彫刻には、ジュエリーのように華やかなローズゴールドがよく似合う。日本限定350本。¥30,800(税込)/カランダッシュ ジャパン TEL:03-6804-3201 (中央:パーカー)美しく輝く矢羽クリップとノックキャップ。なめらかなボディはピンクゴールド仕様でメタリックなカラーで統一された「ジョッター XLモノクローム」。従来モデルより7%のサイズアップをはかり、筆記バランスと書き心地を向上させたニューバージョン。¥3,850(税込)/ニューウェルブランズ・ジャパン TEL:0120-673-152 (右:ファーバーカステル 伯爵コレクション)リブパターンが刻まれたブラックシダー軸の鉛筆が、18KRGのエクステンダーを鮮やかに際立たせる「パーフェクトペンシル」。エクステンダーの先端にはシャープナーを内蔵しており、「書く・消す・削る」が1本に凝縮された鉛筆の最高峰だ。¥44,000(税込)/ファーバーカステル東京ミッドタウン TEL:03-5413-0300
3.ダークグリーン
「ここ数年でカラーバリエーションが一気に増え、選択肢がすごく広がりました」と清水編集長が言うように、ファッションや家電と同様に、文具にも多色化の波が押し寄せている。「以前は手帳などの革製品は黒や茶、ネイビーが主流でしたが、いまはグリーンから売れていきます。『ミドラー』と呼ばれる愛好家も多く、革やインクなどを同じ緑で揃えて楽しんでいます」。リラックス効果が高く、品のある落ち着いたグリーンが、日々の不安や仕事の疲れを抱えた大人にウケているのかも。
(左:グレンロイヤル)英国貴族の馬具として長年愛用されるブライドルレザーの文庫本カバーは、スコットランドの職人によるハンドメイド。重厚感のあるグリーンとの相性もよく、堅牢性も申し分ない。ナチュラルカラーのステッチがアクセント。¥14,300(税込)/ブリティッシュメイド 銀座店 TEL:03-6263-9955 (右:ペリカン)ペリカンのシンボルでもある緑縞の胴軸。2種類の樹脂を張り合わせたブロックを切り出し、ストライプ柄の板をつくるという緻密で繊細な工程が欠かせない。インク残量が確認できるシースルーボディの佇まいも含め、時代を超えて愛される万年筆だ。「スーベレーンM800」¥60,500(税込)/ペリカン日本 TEL:03-3836-6541
大切なペンを収納するための1本用のケース。国内の革職人が手作業で裁断、磨きをかけたゴートスキンのシボ革と、内側にはきめ細かくなめらかで強度のある植物なめしのカーフ革も使用。気に入ったペンをずっと大事に使おうという気分になる。H4.5×W17.5cm。¥13,200(税込)/ポスタルコ TEL:03-6262-6338
4.台湾ブランド
最近の台湾ブランドの躍進には目を見張るものがある。「中西部にある彰化(ジャンホワ)には、高い技術をもった金属加工の工場がたくさんあります。今後はこの工業地帯から台湾ブランドを発信して、世界的に盛り上げていくそう。加工技術の精度も高く、品質のよさに対する手頃な価格も魅力のひとつです。台湾ブランドの勢いは、世界的に広がっていくでしょう。国内メーカーもフレキシブルな発想でどんどんチャレンジしてほしいですね」。歴史や伝統に頼らない斬新なデザインや画期的な発想から生まれる製品も人気の秘訣だ。
(左:アントウ)市販のさまざまなリフィルに対応するマルチ・アダプタブル・ペン「ボールペンC」。マグネット式のキャップを付けたまま回転させると、リフィルを挟んだネジ状の先端パーツが緩み、容易に交換が可能に。機能性の高いシンプルなデザインで、インク残量が見える窓付き。¥9,900(税込)/ジェットセッター TEL:080-3130-3768 (右:ツールズ トゥ リブバイ)2012年に台北にオープンした文具店「ツールズ トゥ リブバイ」のオリジナル「シザーズ6.5」。オーナー兼デザイナー夫婦が手がけるゴールド色のハサミは、ゴム製ハンドルに日本製ステンレス刃を使用。のり付着防止用のテフロンコーティングなど、文具好きのこだわりが詰まった一品だ。¥2,970(税込)/カキモリ TEL:050-1744-8546
5.シーン&シマーリングインク
国内はもちろん世界的にインクが盛り上がっている。「インクは文字を書くものなので色が濃くないといけないのですが、独創的でカラフルな色が増えたこともあり、遊び道具として広がっています。淡いパステル色は画材として使う人も。さらに蛍光色、キラキラの微粒子入りシマーリングインク、光の加減で光るフラッシュインクや匂い付きインクも。いまでは2000色以上もあり、世界中のメーカーがこぞって生産しています」。書くことの楽しさが見直され、万年筆を使う人が増えたことで、インクにもさらなる注目が集まる。
(ダイアミン)英国の老舗インクメーカーが2015年に発売した金色や銀色の微粒子入りのシマーリングインク。写真の「シマーリングシーズ」をはじめとするゴールド系や、「ナイトスカイ」などのシルバー系合わせて全40色。50ml。¥2,420(税込)/北晋商事 www.praebitor.net
インパクトのあるキラキラしたラメが華やかさを見せる。
(カヴゼット)万年筆愛好家で化学者でもあるポーランドのズラヴスキー夫妻が、2015年に創業したカヴゼット。60ml。¥2,310(税込)/北晋商事
夫婦で独自に開発を重ね、19年に発売したシーンインク「シーンマシーン」は、乾くと光の当たり方や見る角度によって、メタリックに赤くフラッシュする画期的な染料インク。
解説者:清水茂樹/『趣味の文具箱』編集長。1965年、福島県生まれ。2004年に雑誌『趣味の文具箱』(年4回発行)を立ち上げ、文具の魅力や新たな楽しみ方を発信する。10 月号(Vol.55)が発売中、1月号(Vol.56)は12月15日発売予定。日本文具大賞の審査員も務めている。
『趣味の文具箱』2020年10月号 vol.55 発売中!特集は「万年筆インクLOVE」
こちらは2020年11月16日(月)発売のPen「腕時計と文具。」特集よりPen編集部が再編集した記事です。
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