世界初⁉ レトログラードの分表示とジャンピングアワーを備えた、本格ダイバーズウォッチ
時計の針が一方向にだけ進み、端に達すると瞬時にゼロ位置に戻る仕組みを「レトログラード」と呼びます。寄せては返す波のような動きが面白いだけでなく、表示部分も円形ではなく扇形で独特なデザインが可能になることから、さまざまなブランドが手がけています。このレトログラードによる分表示を、なんとダイバーズウォッチに採用したモデルが登場しました。
その時計とは、フランス生まれの時計ブランド、レゼルボワールがバーゼルワールド2019で発表した250m防水のダイバーズウォッチ「ハイドロスフィア(Hydrosphere)」です。ヘリウムの混合気体で深海の水圧に順応する飽和潜水用のエスケープバルブ(時計内部に入り込んだヘリウムを排出)も備えた本格派ですが、ダイヤルには針が1本しかありません。この針が00から始まり、60に至ると瞬時にゼロ位置に戻るレトログラードの分表示になっているのです。目盛りも大きなアラビア数字になっており、スキューバダイビングで重要な分の経過が見やすいだけでなく、セラミック製の回転ベゼル(逆回転防止機構付き)まで備えています。
レトログラード機構をもつダイバーズウォッチがこれまでなかったわけではありませんが、分表示に用いて回転ベゼルまで搭載したモデルは、世界初といえるのではないでしょうか。この回転ベゼルは浮上時に必要とされる減圧時間に対応しており、目盛りには15(分)の数字とドットがあります。この回転ベゼルの三角マークを浮上予定時間(分)に先回りして合わせておき、そこから赤のアンダーラインで記された15分を中心とする経過時間を読み取ることになります。ただし、浮上予定が45分以降になると、分針は15分になる途中からゼロ位置に戻ってしまうので、その場合は青色のドットとアンダーラインの15分を読み取る「ダブルスケール」が、レトログラードならではの工夫といえます。
現代では浮上途中で減圧停止をしない無減圧潜水が一般的であり、そのための水深や時間などを詳細に管理するダイブコンピュータを腕にするのが常識となっています。それでもISOやJISでは潜水時間を管理できる逆回転防止付きの回転ベゼルが要件になっているほか、15~20分までの目盛りを分刻みで細かくしたモデルが多いのは、1950年代の初期型ダイバーズウォッチからの伝統とされています。「ハイドロスフィア」もその伝統をレトログラードに導入していますが、簡単に操作できる回転ベゼルによる分計測は、潜水時の目安にできるだけでなく、日常生活でもさまざまに活用できる便利な機能です。
紹介が遅れましたが、6時位置のレンズ付き小窓にはカチリと時間が変わるジャンピングアワー。その下部にはゼンマイの残量が分かるインジケーターが配置されています。
レゼルボワールは、各種のレトロな計測機器に魅せられた元銀行家が2016年にフランス・パリで設立。自動車や潜水艦、航空機の燃料計やメーターなどにインスパイアされたユニークなモデルを発表してきました。「ハイドロスフィア」もスキューバダイビング用空気タンクの残圧計を模しています。レトログラードの分表示とジャンピングアワーの組み合わせは他ブランドにもありますが、計器の機能美が発想の原点なのです。これに実用的で便利なパワーリザーブ表示を加えるだけでなく、大人らしいエスプリと遊び心をスタイリッシュに加味していることが独自の個性であり、魅力といえるでしょう。
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