高級車づくりは難しい! ニッポン代表「レクサスLS」の挑戦は続きます。
2017年10月、11年振りに全面刷新された「レクサスLS」には、並々ならぬ期待を抱いていました。というのも、3月に発表されたラグジュアリークーペの「レクサスLC」が素晴らしい出来映えだったからです。華やかなデザイン、官能的なエンジン、そして敏捷な身のこなし‥‥。「レクサスもついにここまで来たか」と感慨深く思いました。
日本が世界に誇る自動車大国であることは間違いありません。けれども、日本のメーカーが得意とするのは、燃費がよくて壊れない実用車。高級車マーケットでは欧州の列強に一歩遅れをとっているのが実情です。レクサスはそれを自覚し、新しいパワートレーンを新開発し、ボディの構造をいちから見直しLCとLSを完成させました。その意気込みのほどは、1980年代後半に初代「セルシオ」を生み出したときに迫るといいます。
新型LSとLCは、基本的な成り立ちが共通の兄弟モデル。4ドアセダン版がLSで、2ドアクーペ版がLCといった感じです。LCがあれだけよかったのだから、LSへの期待も高まるというもの。
もっとはっきり言えば、ドイツのプレミアム3のフラグシップモデル、すなわちメルセデス・ベンツSクラス、BMW7シリーズ、アウディA8とガチンコ勝負できるのではないかと期待していました。
しかし、レクサスLSは欧州プレミアムブランドの高級車とは違う味付けでした。軽やかで快適ですが、ドイツ車のように濃い走りや個性が少なく、全体的に控えめで和食のような薄口な味付けなのです。
もう少し詳しくレクサスLSを紹介すると、心臓部は2種類。モーターと3.5リッターV6エンジンを組み合わせたハイブリッド仕様と、3.5リッターV6エンジン+ツインターボのガソリンエンジン仕様。そしてハイブリッド仕様とガソリンエンジン仕様それぞれに、ラグジュアリーからスポーティまで、数種類のバリエーションが用意されています。
いくつかの仕様を乗り比べ気になったのが、“EXECUTIVE”と”FSPORT”のキャラクターの違いが大きくないこと。そして運転席と後部座席の乗り心地にそのキャラクターの違いが活かされていないことです。ガソリンエンジンの“EXECUTIVE”は、ジェントルな走りや乗り心地を予感させますが運転席に座り、アクセルを踏みこむと太いトルクと俊敏な加速、そしてダイレクトなハンドリングに、いやがおうでもスポーティな走りを期待してしまいます。いっぽう後部座席は走り出す前は静かで快適なのですが、走り出すとフロントシートが段差で揺れ、乗り心地はすこしザラつきを感じます(ランフラットタイヤの影響か)。
代わってガソリンエンジンの”FSPORT”は、運転すると確かにスポーティなのですが、変速のタイミングがダイレクトではなかったり、クルマの重さを感じたりしてどこかスポーティさには物足りないのです。そして後部座席の乗り心地は“EXECUTIVE”とそれほど変わらない快適なもの。これはこれでいいのですが、、、
そんななかでシリーズで一番に感じたのが、ハイブリッドエンジンの“EXECUTIVE”仕様の後部座席。静かで快適、インテリアの設えもいいものです。限られたスペースでありながら居心地のよさを感じさせるあたり、茶室にも似た雰囲気です。
LCで見せた素晴らしいパワートレーンと強固なボディなど、クルマを構成する素材は一級品です。ですが、ハイヤーやカンパニーカー、VIPの個人使用と多様なユーザーの要求に応えるLSはさまざまな意見を取り入れなくてはいけません。それに加え、いままでLSに乗られてきたお客様の期待を裏切ることはできません。これがLCとLSの決定的な違いになったのでしょう。
軽自動車やコンパクトカー、ミニバンの割合が多く、プレミアムモデルのほとんどがドイツの輸入車という日本市場で、「日本の高級車像」は曖昧です。もっと我々が積極的に高級車に興味を抱き、「日本人にとっての高級車はこうあるべき!」という基準ができれば、日本の高級車は世界に誇れるようになるでしょう。レクサスのいいクルマづくりに期待です。
レクサス LS500/500h
●パワートレーン:3.5リッターV6ツインターボ(LS500)/3.5リッターV6エンジン+モーター(LS500h)
●最高出力:422PS(LS500)/299PS(LS500h)
●最大トルク:356Nm(LS500)/600Nm(LS500h)
●車両価格:¥9,800,000~
問い合わせ先/LEXUS インフォメーションデスク TEL:0800-500-5577
https://lexus.jp