映画「太陽がいっぱい」で見せた、貴公子アラン・ドロンのスマートな着こなし。
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一第4回 「モンブラン」の万年筆
フランスの俳優、アラン・ドロンを一躍スターダムに押し上げた映画が1960年公開の『太陽がいっぱい』です。アメリカ人の女性小説家パトリシア・ハイスミスの原作をフランスの名匠ルネ・クレマンが監督した作品。風光明媚な南イタリアを舞台に友人を殺して完全犯罪を目論む青年リプリーを主人公にしたロマンティックなミステリー映画。主役であるアメリカ出身の青年を演じたのがアラン・ドロンです。“イタリアのアメリカ人”ではありませんが、ジャケット、ボタンダウンシャツ、ホワイトジーンズなど、アメリカ人好みのトラッドなアイテムを、ヨーロッパ流にコーディネートするその洒脱な着こなしは、いま観ても新鮮で、古びることはありません。ニーノ・ロータが作曲した哀しげなテーマ曲とともに、彼のスタイルは、多くの人の記憶に刻まれています。
万年筆が最初に登場するのは、映画の冒頭、ローマのカフェでリプリーが、絵葉書を描いているシーンです。次は映画のポイントになる最も印象的なシーン、フィリップを殺害した後、フィリップに成りすますために、リプリーが彼のサインを何度も練習するシーンがあります。壁にプロジェクターで投影したフィリップのサインを最初になぞる時に、キャップを閉めたままの同じ万年筆が使われています。3度目の登場は、フィリップの預貯金を銀行でおろす場面です。書類にサインを求められたリプリーは、ジャケットの内ポケットから万年筆を取り出し、フィリップのサインを真似て、預金のほとんどを手に入れます。
この映画で使われている万年筆がどのメーカーのものであるかは確定されていませんが、そのクラシックな佇まいは、万年筆の名品「モンブラン」を連想させます。「マイスターシュテュック」は、1924年に誕生したモデルで、50年代には高級万年筆の最高峰と謳われ、世界中の調印や契約などの重要なシーンで使われるようになりました。まさにこの映画がつくられた時代ともマッチします。特徴はキャップトップのエンブレムと、ペン先に刻印された「4810」の数字。そしてゴールドの3連リングなどです。映画と同じく、いまも名品として多くの人から愛されています。
問い合わせ先/モンブラン コンタクトセンター:TEL.0120-39-4810