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近頃はどうやって買い物をしていますか。ネットで情報を集め、比較しながら吟味を重ね、ものを買うのが当たり前になっていることにはたと気がつきます。衝動買いが良いとは思いませんが、もう少し自分の感性や気持ちに忠実にものを買うのもいいかもしれません。そんな自分の感覚を頼りに、ものを見る体験が味わえるのが、ヴィンテージに魅せられた郷古隆洋さんの店「BATHHOUSE」です。
Swimsuit Departmentとして輸入代理店やヴィンテージ品のトランクショーを行っている郷古さんが店をオープンしたのは2014年。神宮前の古いマンションの一室というちょっと行きにくい場所、それも基本はアポイント制というなかなかハードルの高い店ですが、隠れ家ショップを訪れるわくわく感もあります。
店に一歩入ると、圧倒的な物量に驚きます。ショーケースから床、壁まで、モノが溢れていて、どこから見ていいのか迷うほど。それでも、オブジェとしか言いようがない雑多なものをしばらく眺めていると、だんだん気になるものが出てきます。どういうものかを聞いて行くうちに、並べられたものの鮮やかな色艶、豊かなかたちが目に飛び込んできて、楽しい気分になってくるから不思議です。それがここに集められたものたちの持つパワーなのでしょう。
「うちにあるものはほとんど役に立たないもの」と郷古さんは言います。
置いてあるのは、日本やメキシコなど中南米のフォークアートを中心に、オブジェ、陶磁器、ガラス、テキスタイルなど、年代も国籍もさまざま。選ぶのは「直感で良いと思ったもの」という潔さ。敬愛する染色家の柚木沙弥郎さんも「良いものは良い」と語っていたと、モノ選びの基準に自信をもった様子。有名なデザイナーものも、ジャンクな土産物も、価値や希少性に関係なく平等に扱うのも、普通はなかなかできません。共通するのは、古いものということだけ。その理由を「染料もいまと違って発色が良く、材料を惜しみなく使っている。ものづくりを端折っていないので、ものとして美しい厚みや力強さがある。そういうのは身の回りに置いておいて楽しいですよね」と説明します。
買い付けは、週1~2回骨董市に通い、アメリカ西海岸のマーケットに出張することも。市の歩き方のコツは2周すること。「まず一周ざっと見て、目に留まったものを買い、2回目は普通のスピードで見ます。初見はそわそわしていることもあるし、2回目はまったく違うように見えるんです。うちの店でもお客さんには2回見てって伝えます」