Swimsuit Department 郷古隆洋さんの...
写真:永井泰史 文:佐藤千紗

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不思議なオブジェも、店主の郷古隆洋さんの話を聞いていると、宝物のように思えてくるから不思議です。フォークアートを中心に、色鮮やかで力強いモノが所狭しと溢れかえります。

近頃はどうやって買い物をしていますか。ネットで情報を集め、比較しながら吟味を重ね、ものを買うのが当たり前になっていることにはたと気がつきます。衝動買いが良いとは思いませんが、もう少し自分の感性や気持ちに忠実にものを買うのもいいかもしれません。そんな自分の感覚を頼りに、ものを見る体験が味わえるのが、ヴィンテージに魅せられた郷古隆洋さんの店「BATHHOUSE」です。

Swimsuit Departmentとして輸入代理店やヴィンテージ品のトランクショーを行っている郷古さんが店をオープンしたのは2014年。神宮前の古いマンションの一室というちょっと行きにくい場所、それも基本はアポイント制というなかなかハードルの高い店ですが、隠れ家ショップを訪れるわくわく感もあります。

店に一歩入ると、圧倒的な物量に驚きます。ショーケースから床、壁まで、モノが溢れていて、どこから見ていいのか迷うほど。それでも、オブジェとしか言いようがない雑多なものをしばらく眺めていると、だんだん気になるものが出てきます。どういうものかを聞いて行くうちに、並べられたものの鮮やかな色艶、豊かなかたちが目に飛び込んできて、楽しい気分になってくるから不思議です。それがここに集められたものたちの持つパワーなのでしょう。

カウンターや棚、梁の一部など、オブジェたちが店内を埋め尽くします。中央に見える、愛嬌のある木彫りのカメは1970年代のメキシコのフォークアート。¥37,800

こちらも同じくメキシコのフォークアートたち。コバルトブルーが鮮やかな燭台、ツリーオブライフや丸みが愛らしい鳥のオブジェなど、力強い生命力に満ちた作品が生活に彩りを与えます。

BATHHOUSEのたのしみは、ジャンルも国もさまざまなものが並んでいる中で自分だけの発見をすること。ひときわシンプルなカップ&ソーサーは森正洋さんによるもの。¥3,240

こちらはブラジルの先住民族カラジャ族による土人形。アレキサンダー・ジラードもコレクションしていたものです。

食品サンプルの果物や福助人形などを、市で手にする眼。鮮やかな色や丸みは他のセレクトにも共通する要素です。

こちらはスペインの高級磁器メーカー、サルガデロスのティーセット。店内で異彩を放つ魅力的な力強いデザインは、スペインの伝統建築に影響を受けたものといいます。

店内の至るところにアイテムがあるので見逃さないよう、要注意。こちらは梁に設置されたジョージ・ネルソンの「インスパイア・クロック」。すべてのアイテムがフラットに並びます。

「うちにあるものはほとんど役に立たないもの」と郷古さんは言います。

置いてあるのは、日本やメキシコなど中南米のフォークアートを中心に、オブジェ、陶磁器、ガラス、テキスタイルなど、年代も国籍もさまざま。選ぶのは「直感で良いと思ったもの」という潔さ。敬愛する染色家の柚木沙弥郎さんも「良いものは良い」と語っていたと、モノ選びの基準に自信をもった様子。有名なデザイナーものも、ジャンクな土産物も、価値や希少性に関係なく平等に扱うのも、普通はなかなかできません。共通するのは、古いものということだけ。その理由を「染料もいまと違って発色が良く、材料を惜しみなく使っている。ものづくりを端折っていないので、ものとして美しい厚みや力強さがある。そういうのは身の回りに置いておいて楽しいですよね」と説明します。

買い付けは、週1~2回骨董市に通い、アメリカ西海岸のマーケットに出張することも。市の歩き方のコツは2周すること。「まず一周ざっと見て、目に留まったものを買い、2回目は普通のスピードで見ます。初見はそわそわしていることもあるし、2回目はまったく違うように見えるんです。うちの店でもお客さんには2回見てって伝えます」

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