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デザイナーによる緻密なプロダクトも素敵ですが、時に「なぜだかわからないけど面白い」プロダクトに出会いたくなります。理由をまとわない自由さに触れたくなったら、インテリアショップが軒を連ねる目黒通りを歩いてみましょう。中でもゆるやかな坂の登り口にある「ACME Furniture(アクメファニチャー) 目黒店」は、新しいものを発見しにふらりと気軽に訪ねることのできるショップのひとつです。
アクメファニチャー(以下アクメ)は、1940年代から1970年代の質の高いアメリカンヴィンテージ家具の輸入販売とともに、ヴィンテージアイテムをカスタムしたオリジナルプロダクトの製造も得意としてきました。そんなアクメの技術と個性が発揮されたオリジナル照明器具が、本日からスタートした「LAMP!LAMP!LAMP!」展で限定販売されています。
巨大な蓄音機のホーン、ソリッドな質感のアルミダイキャスト製ヘアドライヤー、水道のメーター、折りたたみ式の物干竿、そして地球儀など。レザーやマホガニーのヴィンテージ家具が所狭しと並べられた店内には「これって何だろう?」と心の中でつぶやきたくなる、そんな意外性のあるものがペンダントやフロアランプに姿を変えて展示されています。カスタムメイドとは言え、PSEマーク(出荷前に電気用品安全法に基づいた検査及び検査記録を保存して、電気用品が一定の安全性を満たしていることを示す)も取得しています。
「この照明器具を見たお客様に“ばかだなー”と笑ってもらえたら、それは僕たちにとって最高の褒め言葉なんです」と言うのは広報の勝山龍一さん。もともとアクメは30年前の創業時から、飛行機のパーツをインテリアアイテムにカスタムメイドするなど、ユニークなプロダクトをつくることでコアなファンの心をつかんでいました。勝山さんの言葉から、遊び心を忘れないクラフツマンシップをスタッフが脈々と大切にしていることを感じます。
今回の展示で販売するオリジナル照明器具を製造したのは、アクメのファニチャープロデューサー、設楽真也さん。入社時からリペアやカスタムメイドを手がけてきた叩き上げの職人でもあります。
「年に4回、おもにアメリカ西海岸へ家具の買い付けに行きます。バイヤーとの商談のほかに、僕らはいつも空港で荷台の大きなトラックを借りて、地元の人たちが買いにくるようなフリーマーケットを回っています。そうすると用途はわからないけどフォルムがかっこいいとか、なぜか惹かれるヴィンテージアイテムとの出会いも多いんです。手に取りながらこれは何にしようかな、と考えるのが楽しくて」
そうしてストックされたものに機能が加わりプロダクトに仕上がりますが、その試行錯誤のプロセスや、トラックを走らせながら買い付けたときの西海岸の空気感が、これらの照明器具の手触りから伝わってくるようです。ちなみにこの企画展のためにつくられたオリジナル照明器具は10点ほど。どれも1点もののため、お早めに店頭でチェックしてください!
「インテリアに凝りたいと思ったときに、照明器具は効果を感じやすいアイテムですよね。照らすという機能はどの照明もある程度クリアしていますので、思い切った形状やデザインで部屋の印象をがらっと変えてみては」と設楽さん。フロアランプはもちろんのこと、ラウンジチェアやソファを置いた一角に大きめのペンダントランプを低めに吊るして光の重心を下げ、落ち着いた雰囲気を演出できます。
展示されるものは個性も強く、点数も限られていますが、アクメには定番のランプも多数。これにあわせ、ペンダントランプシリーズの「ソリッドブラス」には新作もお目見えします。無垢の真鍮のパーツを組み合わせてつくった文字通りソリッドな質感は、レザーや鉄、無垢の木を使った上質なミッドセンチュリーモダンの家具と相性良し。ソケットが垂直に下がるだけでなく、水平や水平垂直にアレンジできるものなどバリエーションが増えました。
ミッドセンチュリーのアメリカンファニチャーの雰囲気にあふれるアクメ。彼らがその雰囲気を大切にするために心がけているのもやはり照明で、店内のほとんどの照明器具の光源に白熱電球を使っています。家庭用電球の多くがLED光源になるなか、1940年代から1970年代の家具が使われていた当時の雰囲気を照明でもなるべく再現するために、昨年からオリジナルでフィラメント電球も生産しているというから驚きです。せっかく購入した照明器具も光源の形状や光の色温度が合わないと興ざめしてしまうもの。
設楽さんも「電球の形状も合わせての照明デザイン」というように、電球のガラスがクリアかフロストか、フィラメントが見えるか、エジソンランプ型かボール球かという要素は照明にとって大切です。現在店頭では白熱電球を常時在庫しているので、玉切れしても補充で困ることはありません。まずは夕暮れ時、シェードへの反射や照明の明るさが良くわかる時間帯にお店に出かけてみてはいかがでしょう。どこか懐かしさを感じる家具に座りながらフィラメントを眺めていると、光のあたたかさと心地よさにあらためて気がつくはずです。