マリオ・ベリーニ
1977年にマリオ・ベリーニがデザインを手がけた椅子「キャブ」は、気品のある姿ながら、そこはかとなく漂う色気が魅力的な名作椅子です。レストランや美術館などのパブリックスペースから個人宅のダイニングまで、オールマイティーな椅子として長年に渡って愛されています。
イタリアの巨匠マリオ・ベリーニは1960年代に活動を始め、70年代には早くもイタリアを代表するデザイナーとなりました。日本との親交も深く、ヤマハや象印のプロダクトデザインに加え、五反田の東京デザインセンターでは建築設計も手がけています。現在もなお、精力的に活躍を続けています。
ベリーニの数多い作品から椅子1脚を選ぶとなれば、1977年の登場以来、50万脚以上が製造されている「キャブ」をおいて他にありません。この椅子の大部分は、鉄パイプの構造体とそれを覆う厚い革でできています。どちらか単体では椅子として成り立ちませんが、構造体に革を被せることで椅子として機能し、フォルムと快適さを生み出しています。
鉄と革の椅子といえばマルセル・ブロイヤーの「ワシリーチェア」やマルト・スタムの「S33」などが連想されます。しかしそれらは要所にのみ革を使用し、装飾性を排除した機能美を強調させています。一方、全体が革で覆われたキャブの均質なフォルムからはイタリアの粋な雰囲気を感じ取れます。ベリーニは、「慣習、感情、文化が形態をつくる」と語っています。それぞれの椅子を凝視することで見えてくるデザインの面白さを名作椅子は気づかせてくれます。
●問い合わせ先/カッシーナ・イクスシー青山本店 TEL:03-5474-9001 www.cassina-ixc.jp