ポール・M・ヴォルタ
シンプルなスポークバックチェア「J46」をデザインしたのは、ボーエ・モーエンセンの後を継いで「デンマーク生活協同組合連合会(FDB)」でデザインマネジャーを務めたポール・M・ヴォルタです。1956年の発表からすぐに85万脚を売り上げ、デンマーク国民の5人に1人が所有していたという逸話をもつ椅子です。
家具職人を経てデザイナーとなったポール・M・ヴォルタは、ハンス・J・ウェグナーの推薦でデンマークの人々の生活レベルを向上するための組織「FDB」の家具部門に入社します。ここで「J39」を生み出したボーエ・モーエンセンが退職すると、ヴォルタはモーエンセンが担っていたデザインマネージャーの役職をわずか27歳で受け継ぐこととなります。
モーエンセンの「家具は人々を幸せにする」という信念を受け継ぎながら、よりシンプルで機能的な家具をデザインしたヴォルタ。その真骨頂とも言える「J46」はウィンザーチェアの装飾を省いてたどり着いた形です。1956年の発表とともにデンマーク国民に受け入れられ、モーエンセンの椅子を越えてFDBモブラー最大のヒット作となりました。2013年にFDBモブラーが再始動すると、先にフレデリシアから復刻された「J39」ともどもデンマークの国民的な椅子として復刻再生産されます。
完璧主義であったヴォルタは流行を追う短命な家具を嫌い、上質な素材でシンプルなデザインを追求し、手頃な価格ながら息の長い家具を目指しました。FDBを退職後はデンマークの応用芸術学校で教え、後進の育成に力を注ぎました。その思いは北欧デザインの源流の一部となり、いまも脈々と受け継がれています。
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