深澤直人
日本を代表するデザイナーの深澤直人は、同じくデザイナーのジャスパー・モリソンとともに「スーパーノーマル」というデザインの考えを提唱しています。デザインとはいったいなにかということに一石を投じるこの理念は、普遍性とその豊かさをあらためて私たちに気づかせてくれました。一見するとなんの変哲もない「ノーマル」なものは、気取ることなく日常にすっと馴染みます。つまりそれは、時が経っても色褪せることなく、価値を保ち続けることができるのです。
その理念を体現し、世界に認められた日本の名作椅子が深澤によるマルニ木工の「ヒロシマ」です。製品から「スーパーノーマル」を感じさせるアップル社もその美意識に共鳴し、アメリカ・カリフォルニア州の本社で使用しているといいます。さて、この「ヒロシマ」は一見するとシンプルに見えますが、溶けるように滑らかな曲面を描く深澤のデザインと、それを支える優れた木工技術の融合が生み出した一脚です。繊細なラインは正確な図面化が難しく、まず職人の手の動きを数値化したプログラミング技術を使って3次元加工機で成形されるといいます。その後、職人が一脚一脚を磨いて完成。こうした最新の工作機械と職人の確かな技術が融合し、工業製品でありながらも手作業の温かみを感じさせる椅子を実現させているのです。
こうして生まれた「スーパーノーマル」な一脚は、どのような空間にも調和するので国内外のレストランでも多く使用されています。飽きることなく使い続けられるこの椅子は、まさに白米のような存在。ダイニングチェアとしてはゆとりある座面で、ゆったりと寛ぎのひと時を過ごすことができます。その存在はさりげなく上質で、空間の質そのものも格上げしてくれることでしょう。
●問い合わせ先/マルニ木工 TEL:03-5614-6598 www.maruni.com/jp