コンスタンティン・グルチッチ
21世紀以降に発表された椅子から名作を選ぶとしたら……外せないのがこのチェアワン。いま、世界で最も活躍するインダストリアルデザイナーの一人であるコンスタンティン・グルチッチが2003年に発表した一脚です。名作の条件の一つにロングセラーであることが挙げられますが、まだ歴史の浅いこの椅子の魅力はいったいどこにあるのでしょう。
初回に紹介したイームズのシェルチェアのようなアメリカのミッドセンチュリーに生まれた家具、そして北欧家具やバウハウスの作品など、数多くの名作からの蓄積を経て、現代のデザインは生まれます。年々多様性を増すデザインの世界では近年、どこかアートを思わせるコンセプチュアルな椅子も多くなってきました。ユニークな造形が目を惹くチェアワンもまた、常識に捉われないデザイナーの自由な発想が感じられませんか。
このように既成概念を破る表現を可能にしたのは、ものづくりの技術が進歩していることが挙げられます。いくつもの三角形を組み合わせて立体的に立ち上げられた形状から、エッジ部分のみを残して構成した力強いフォルム。この椅子最大の魅力であるフォルムは、グルチッチが人間工学に基づいてダンボールで実寸模型を組み上げ、その姿かたちを検証した後にコンピュータ―を用いた最新の設計技術でデザインしたといいます。
彫刻的な造形が適度な緊張感と知的な印象を与えてくれるチェアワン。そのフォルムはすっきりとした空間でこそ映えるものと言えそうです。屋外使用も可能なのでテラスで使っても素敵でしょう。芝生や木々などのグリーンとのコントラストは、ナチュラルな空間を引き締める存在となりそうです。
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