4K動画技術で、後からじっくり フォーカス調整。
フォーカスは、撮影時に決めるというカメラの常識を打ち破り、「後からフォーカスを変える」を可能にした第一弾が、アメリカのベンチャーが開発したLYTROILLUMカメラだった。レンズの前の光の束を方向ごとに記録する特別な光学技術を使っていたが、パナソニックも「後からフォーカス」の開発に成功した。それも光学ではなく、信号処理で実現したのがさすがだ。
パナソニック開発の「フォーカスセレクトモード」は、撮影後にカメラのモニターを見ながらフォーカスポイント変更可能。間違って花にピントが合ってしまった写真でも、再生画面を見ながら、人物にフォーカスがあっている画像を選べばよい。
どんな仕組みなんだろう。単純な話、4K動画撮影の応用だ。一秒で複数の静止画が連続するのが動画というもの。撮影時は、複数のフォーカスポイントを瞬時に算出した後、30コマ/秒で近くから遠くの被写体にフォーカスを移動させながら撮影し、後から再生しながら最適のフォーカスをもつものを選び、画像ファイルとして残す。
問題は、カメラは「どれほど正確に適切なポイントを突くか」。せっかく多数のポイントが存在しても、的を射ていなければ無用だ。そこで頼るのが、パナソニックのワン・アンド・オンリーの「空間認識AF」。実際、GX8を使っていると、そのあまりのAFの速さと的確なフォーカシングに感動すら覚える。
従来の「コントラストAF」の場合は、レンズを動かしながら明暗差の大きい箇所を探していくという原理上、一度ポイントを行きすぎ、それから戻る動作が必要で、ボケが発生したり時間もかかる。その不具合は1秒に30回、合焦作業を繰り返す4K動画では目立ってしまう。なんとか、被写体との正確な距離をAF動作を始める前につかめないか。
実はパナソニックでは、3Dが華やかな時代に、被写体との距離を瞬時に正確に測定する技術が編み出されていた。わざとピントをずらした画像を複数撮影し、そのボケ方の差から、被写体までの距離を計算する仕組みだ。今回の実際の動作では、初動が速い空間認識AFがポイント付近まで一気に高速で移動し、さらに微調整をコントラストAFで行う。合焦速度はわずか0,07秒の俊速。このハイテクAFで、まずシーン全体の47箇所をサーチし、複数のフォーカスポイントをあらかじめ認識。順に一秒30コマで、ポイントを変えながら撮影するのだ。
デジタルは、使いようで価値が出る。単に4K動画が撮れるという段階から大きく進歩し、「30コマの連続する静止画の集合体から何ができる」という発想から、常識外れのベネフィットを実現したことに、大きな拍手を贈りたい。
シーン全体のフォーカスポイントを47カ所でとらえ、1秒30コマでポイントを変えながら撮影する。
●パナソニック 0120-878-365