1枚絵のように 壁に飾り、テレビを鑑賞する。
青野 豊・写真
photographs by Yutaka Aono

1枚絵のように 壁に飾り、テレビを鑑賞する。

スピーカーと電気回路はサウンドバーに格納し、モニターを極限まで薄くした。市場想定価格約¥1,000,000

年明けから、ソニー、パナソニック、東芝など日本メーカーが有機ELテレビを続々と発表している。これまでの液晶テレビに対し画質的なメリットが格段に多く、今後のテレビシーンの主流になることは間違いない。そんなトレンドをつくったのが、韓国のLGエレクトロニクスだ。同社は2012年から韓国と欧米市場で大型有機ELテレビを世界で初めて発売、日本でも他社に先駆け、15年から4K有機ELテレビをリリースしている。傘下に抱える世界唯一のテレビ用有機ELパネルメーカー、LGディスプレイの最新パネルが使える立場にあるのも有利だ。

最新の65W7Pも画期的。LGディスプレイが開発した0・9㎜パネルの「Wallpaperpanel」を組み込み、セットでは厚みがわずか3・9㎜。ブランド名は「Picture-on-Wall」。有機ELは液晶が敵わないハイコントラストや俊敏な動画応答性で評価されているが、「形と機能の多様性」も液晶の及ぶところではない。液晶はバックライト、液晶板、偏光板、各種フィルターなど、多くの部材が必要だが、自発光の有機ELは、有機EL板と駆動のTFTぐらい。その分、厚みを薄くできる。

薄さと軽さを活かし、壁への着脱も容易にした。まず壁にマグネット板を部分的に取り付ける。テレビ側にも対応するマグネット板が取り付けられており、磁力で密着させるのだ。硬い一枚板をそのまま直線的に壁に付けるのではなく、少しカーブさせながら壁に取り付け、取り離す。曲がらないと取り外す時に力が要るが、端の曲がる弾力性があるため少しの力で外すことが可能だ。

すると、テレビのローテーションが可能になる。テレビを買い換えた時、以前なら古いテレビを別の部屋に移動して、使うことができた。比較的、軽かったからだ。しかし最近は液晶テレビが重くなり、持ち運びも大変。でも有機ELの軽さを活かせば、どの部屋にも移動できる。

あまりに薄いので、スピーカーと電気回路は下に置く付属のサウンドバーに格納。電源インレットやHDMI端子もその中にあり、ディスプレイとの間は一本線で結ばれる。

有機ELの形の革新はこれからも注目だ。すでにLGディスプレイは18インチの360度曲面の試作機を開発。今後、より大型化し、耐久性が向上するだろう。すると、これまでのテレビの概念ががらっと変わる。巻き取りや巻き上げ式で、テレビを見る時にロールカーテンのように広げ、見ない時には収納しておく。使わない時には巨大な黒い板が視覚的に邪魔、というテレビの問題点が解決されよう。有機ELは現在のところ、ほんの僅かに曲がるだけだが、近い将来、巻き上げテレビは必ず実現する。今回の65W7Pは、それへの一里塚だ。

1枚絵のように 壁に飾り、テレビを鑑賞する。

壁にぴたりと密着した設置部分。パネルは3.9㎜という薄さで、壁かけテレビの新境地を切り開いた。

麻倉怜士
デジタルメディア評論家。1950年生まれ。デジタルシーン全般の動向を常に見据えている。巧みな感性評価にファンも多い。近著に『高音質保証!麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。
※Pen本誌より転載
1枚絵のように 壁に飾り、テレビを鑑賞する。