見た目を変えず 進化を遂げる、高級コンデジ
RX100はソニーのコンパクトデジカメのハイエンド。一眼ユーザーがサイドカメラとして思わず使いたいと憧れる高性能がウリだ。7月に登場したⅣは2012年の初代から数え4代目。毎年モデルチェンジし、その都度完成度を上げている。
今回のⅣにはCMOSの技術革新がある。「積層型」という新技術だ。これまでは、撮像部で光から変えた電気信号を信号処理回路に送り、さらにメモリー部で記憶していた。積層型はこの3つの機能をワンチップにまとめた。電子の流れが従来比5倍以上も速く、その最大の恩恵がシャッタースピード。これまで4 0 0 0分の1が最速だったが、今回はなんと3万2000分の1!この超スピードでしか実現しないのが、晴天の雪山、ギラギラ太陽の下の浜辺など、高輝度での背景ぼかしだ。レンズのF値を開放にしないと、背景はボケてくれないが、明るすぎると露出は自動で絞られてしまう。そこで、シャッタースピードを速くして光量を落とすことで、絞りを開放にできる。電子転送スピード5倍は、ほかに4K動画、1秒960コマまでのスローモーション、動画と静止画の同時記録という恩恵を与えた。
このように機能が加わったのに、サイズは初代からほとんど同じ。実は、これ「社長命令」だ。社長の平井一夫氏に会った時、こう言った。
「私はいいモノの形は変えてはならないと言ってきました。RX100を評価していただいたお客さんは、デザインが大きく変わってしまったらご不満をもつでしょう。だから、絶対に基本デザインは変えてはいけない。液晶角度を変えたり、ホットシューを付けるのはかまわないけど、フォルムや使い勝手を損ねることは絶対にやるな、と指示しました」
シリーズで最大の物理的な機能追加となったのが、3代目になって初めてのファインダーを搭載したこと。高密度に部品がたっぷり詰まっているところに、どうやって入れたのか。Ⅱにあったホットシューを廃止、右にあったストロボを移し、その部分にポップアップ式のファインダーを詰め込んだ。側面のスイッチを下げると飛び出すが、加えて、接眼部分を指で手前に引き出す。そんな面倒をユーザーにかけても、なんとか搭載した。サイズと基本デザインを同一にするため、ここまで頑張る。Ⅳが出ても以前の3モデルは、そのまま売られている。中身だけが新しくなり、形やデザインは、いつまでも古くならないのである。ここでは性能差を価格差だけで、ユーザーに選択の幅を与えている。この技術革新が激しい時代に4年前のデジカメが堂々と、現役を張っているのだ。形・デザイン、そして中身への飽くなきこだわりが、デジタル製品として大変珍しいロングセラーにつながっている。
サイズをキープしたまま機能を進化させるために、ストロボやファインダーが効率よく収められている。
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