東京車日記いっそこのままクルマれたい!
第12回 ジャガー 「XJ オートバイオグラフィ LWB」/JAGUAR XJ AUTOBIOGRAPHY LWB
先輩のジャガーは横顔で語る。起こせよ! キミの “ダブルシックス”ムーブメント
つい最近のこと。駒沢通りで、道をゆずったクルマがジャガーのXJでした。それもたぶんロングホイールベースの。悠々と前を横切っていく黒いサルーン。一瞬、マセラティのクワトロポルテかと思いきや、この特徴的なショルダーラインを見るにつけ、眼を見張ったよね。そして見送った後、思わず「シブい……」と唸らされた。その後、メルセデスやBMWに目もくれずロングのXJを買った男前はどんな先輩なんだろうと気になったし、実際、いまでも気になってる(笑)。そもそも、ほとんど都内でも見ないし。XJ。
とどのつまり、ショルダーラインからテールにかけての造形が、クルマの特徴を完璧に言い表してるよね。5リットルのV8スーパーチャージド・エンジンは、理想としている自然吸気のダブルシックス(V12)の味わいを色濃く出してるし、道のギャップを軽やかに均してく、ジャガーの真骨頂である足回りも最高。ダッシュボードにあえてギャップをつくって、ウッドパネルとレザーのコントラストを引き立たせるとか、ほかでは真似できない感性だもの。むろんロングゆえにリムジンみたいに、後部座席でシャンパン片手に流れる夜景を楽しむのが本筋のクルマではあるんだけど、あえて言いたい。ロングのLは“ロンリネス”のLでもあると。
つまりXJのロングを、自分が後ろに乗る目的で買うのではなく、自分で運転して自分で後部座席に座るために買うんですよ。そして映画の『リンカーン弁護士』みたいに人馬一体で絶えずクルマとともに移動して(あの映画では運転手がいたけど)、仕事の合間合間に後部座席でネクタイゆるめ、また仕事に打ち込む。たまに思いたってひとり海を見に行き、後部座席で飽かずに波を眺めている・・・とかね(笑)。そういう人生の円熟期を迎えた、ある種の孤高性を帯びた男性にしっくりくるんだ。
俺はこの円熟期を「シーズン・オブ・ダブルシックス(V12の季節)」と呼んでるんだけどね(笑)。この時期こそ、クルマとは自分の名刺代わり。そんなとき、大きすぎない適度なサイズのサルーンを乗りこなす大人って格好よくないか? もう「絶対アリ」だと、実際にXJに乗って確信したね。むろんパートナーと乗っても最高のクルマだと思う。その瞬間、後部座席のロンリネスはラブのLへと変わるんだ(笑)。いいじゃない。アル・グリーンの「ラブ&ハピネス」みたいな、大人のハッピーエンディングが見えるもんね。先輩、マジで憧れます。
●エンジン形式:5ℓ V型8気筒スーパーチャージド
●最高出力:510ps/6,000-6,500rpm
●最大トルク:625Nm/2,500-5,500rpm
●トランスミッション:8速AT
●車両価格:¥20,020,000