V12はやっぱり真夜中のハイウェイ仕様!? フェラーリ...

東京車日記いっそこのままクルマれたい!

第59回 Ferrari GTC4Lusso / フェラーリ GTC4ルッソ

V12はやっぱり真夜中のハイウェイ仕様!? フェラーリ GTC4lussoは、最後の背徳のフェラーリとなるか。

構成・文:青木雄介

編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

特に目を惹くのは、サイドの3枚のエアダクトフィンとリアのツインテールランプ。車名もそうだけれど、レガシーを惜しみなく投入しているところにフェラーリの思いの深さがうかがい知れる。あと写真を撮り忘れたけれど(笑)、内装と同じ革張りのトランクルームは、現行車の中で最も美しいトランクルームだと思う。

このフェラーリ GTC4ルッソ。乗ってみるまでは、あまりいい印象をもっていませんでした。理由はスタイリングで、「このショートブーツのようなカタチをしたクルマを、フェラーリはよしとするのか?」というところに越えられない壁を感じていたわけ。フェラーリ  フォー(FF)から続く、リアエンドを裁ち落とすシューティングブレイクスタイルは、もうやめてほしいと思っていたんだな。今回、フェラーリ GTC4ルッソにV8モデルが出たことで、改めて「フェラーリのV12自然吸気エンジンはこれで最後かも」という思いもあり、ちゃんと乗っておきたくてチョイスしてみた。で、これが生涯で最も当初の印象が裏切られた1台になったんだな(笑)。音楽でたとえると、ジャケ写がダメだと思っていたアルバムが、聴き込むうちにジャケ写ごと好きになる感じ。

結論から言うと、この異形感のあるシューティングブレイクスタイルは、このスタイリングが故にフェラーリらしいんだ。実際、見れば見るほど乗れば乗るほど、ハッとさせられる。「これはなんなのだろう?」と考えて、答えはパラドックスにあると気づいた。前と後ろが首尾一貫していない別物のような二面性は、走りはフェラーリなのに4座あって4輪駆動という、GTC4ルッソのコンセプトそのものなんだよね。GTC4ルッソには後輪操舵も加わった独自の4WDシステム、4RM-Sが装備されているんだけれど、ロングホイールベースなのに狭いスペースでもよく曲がれるし、コーナーや直進での安定性も万全。このアップデートされた挙動に加えて、前述のV12自然吸気エンジンの魅力が加わってくる。

確かに、低速域ではエキゾーストノートも抑えられていて、大人のフェラーリなんだけれど隙は見せない。エンジンのレスポンスは繊細だし、路面のギャップやノイズもベールに包んでなめらかになっているけれど、全身で感じ取れる。そして低速域で既に、超高速域の神々しい世界が、賢者の沈黙かのように(笑)、垣間見えるのだ。アクセルを踏めば、6in1のエキマニ(排気集合管)から奏でられる、灼熱の砂嵐のような乾いたエキゾーストノートが響き渡る。たとえば始動したての暖まっていない状態と、しっかり暖まってからの音では、解像度や迫力がまったく違ってくるんだよね!  フェラーリらしさというか、4座のスーパースポーツとして最大限の譲歩をしながら、フェラーリのリアルを守り抜いている。

8000回転で690馬力を叩き出すこのエンジンは、フェラーリの魂そのもの。でもV8ターボがある現在、サーキットはそっちに任せて、V12の魂はロードゴーイングの超高速域に解放するのが似つかわしい。速度が上がっていくほどに車両は安定していき、やがては光線とエンドルフィンの海へと到達。その速度域でV12はより濃密で背徳的、かつとことん官能的なフェラーリの世界を現出させるはずなんだ。そう、そもそもスーパースポーツは公道におけるファンタジーだし、存在からしてパラドックスですよ。フェラーリはしかしながら、そのファンタジーをまったく損なっていなかった。GTC4ルッソのデザインやキャラクターも、このパラドックスをむしろ積極的に肯定しているって気がするんだよな。

フェラーリ GTC4ルッソ
●エンジン:6.3ℓ65度V型12気筒
●出力:690PS
●トルク:697Nm
●トランスミッション:F1 DCT(7速デュアルクラッチ)
●車両価格:¥34,700,000(税込)~

問い合わせ先:フェラーリ・ジャパン コミュニケーション
TEL:03-6890-6200
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