天体の動きを精緻に描く、美しきムーンフェイズ
岩崎 寛(STASH)・写真photographs by Hiroshi Iwasaki
並木浩一・文
text by Koichi Namiki
ロレックスのモデルにはさまざまな褒め言葉が与えられるが、「チェリーニ」のそれはひとあじ違う。都会的に洗練され、ドレッシーでエレガント、クラシカルであることが長所となる、ロレックスの中でもとりわけ個性的な逸品だ。そのチェリーニコレクションに、初めてのムーンフェイズモデルが加わった。
ケース素材は、ロレックス独自のエバーローズゴールドを採用。バラ色の「チェリーニ ムーンフェイズ」は、ワンアンドオンリーの華やかな存在感が引き立つ腕時計である。ノーブルなラウンドケースに、ドームとフルーテッド模様を刻んだダブルベゼル。眩しいホワイトのラッカーダイヤルには、12時位置のクラウンマークを円弧で挟むミニッツトラックを敷いた。さらに外側には、先端を三日月にかたどるポインター式の日付表示を回す。
均整の取れたスタイルに天空への窓を開けるのが、ムーンフェイズである。ブルーの暗夜をエナメルで広げ、メテオライト(隕石)で描く満月と、シルバーのリングで表す新月を正対させ、同じくシルバーの星を散らす。太陰暦のサイクルで転回するディスク式の月相表示は、景色を変えながら周回し、最外周の日付数字とピッチの異なる1ヵ月を描く。
天体のダイナミズムが美しく表現されるだけでなく、極めて精緻な技術に裏打ちされている。完全自社製作のムーブメントは、COSCの公式認定を受け、さらに組み立て後にロレックス独自の検査を行った高精度クロノメーターだ。ムーンフェイズの精度は122年で1日分、つまりは秒目盛で言えば1年で50分の1秒弱。人の目では確認できないほどの傾きにまで、精度を追い込んだ。
空や海中、レース場やヨットの上、あるいはビジネスシーンに置かなくとも、ロレックスがなお魅力的であることの、確かな証言。チェリーニムーンフェイズは、積み上げた腕時計の美点がそのまま魅力になる、天性の名品である。
チェリーニ ムーンフェイズ