レンズの可能性を 劇的に広げる、大型の新マウント
ニコンが初めて全力投入した、ミラーレス一眼だ。この「Z」の登場は、技術の栄枯盛衰物語のひとつ。性能が圧倒的に優れるから、支配は永遠に続くと思い込んでいた精巧技術が、後に出てきた簡易な対抗技術に圧倒されるという図式だ。ニコンも、これまでいくつかミラーレスを出していたが、いずれもラインアップ埋めの域を出なかった。ニコンにおいては、最高のフォーマットは絶対的に、内部にミラーをもつ「一眼レフカメラ」であった。
しかし時代は変わった。スマホに押されて惨憺たる状況のデジカメだが唯一、急激に伸びているのがミラーレス。一眼レフの王者、ニコンもさすがに覚醒。市場から「強制」されたような形で、本腰を入れていなかったミラーレスに主力のステイタスを与えざるをえなくなった。しかし、さすがはニコン。これを好機と捉え、これまでしたくてもできなかった新マウントの導入に踏み切った。
従来からのFマウントはニコン最大の資産であり、最大の抵抗勢力だった。Fマウントは約60年も前につくられ幾多の名レンズを生んだが、レンズマウント口径とフランジバック(マウント面から撮像素子までの距離)は途中で絶対に変更できないので、その条件の下でのレンズ設計を強いられていた。画期的なアイデアがあっても、条件に合わなければ捨てざるをえない。
ところが今回、マウントとフランジバックを完全に新規設計できたのだ。まさに天恵だ。新Zレンズのマウント径は、ボディが小型化したにもかかわらず、Fマウントの47mmから55mmへ大胆に大型化し、フルサイズセンサーを完全にカバー。逆にフランジバックはFマウントの46.5mmから16mmと大幅に短縮。センサーの近くで補正が可能になるので、短ければ短いほどよい。
マウント制約から解き放たれたニコンの技術者は、燃えて新規レンズの開発に取り組んでいる。設計の自由度は、最もレンズフォーカスが甘いF値開放での解像感の向上、収差の減少に向けられている。新規のZレンズは2018年に3本、19年に6本、20年に3本をリリースする意欲的な計画だ。
ニコンが全力投入すると、ミラーレスもこう変わるのか。ホールド感が素晴らしい。右手でグリップを握り、左手でレンズを持つと安定した姿勢で撮影に臨める。人指し指がシャッターボタン上に自然に置かれるのがいい。掌の感触も高密度だ。リジッドな感覚にて、いかにも中味が濃い。スイッチの押し感の確実さ、電子ビューファインダーの美しさ、そして、撮影画質の素晴らしさ。細部までエネルギーが満ちる。ピーンと張ったテンションが強い映像の質感は、ミラーレスを本物にする決意表明にも見えた。
レンズは他にも24‐70mmf4、50mmf1・8がラインアップ。Fレンズが装着可能なアダプタも発売された。
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