スピーカー配置を刷新、“22.2チャンネル”の立体的な...
青野 豊・写真
photographs by Yutaka Aono

スピーカー配置を刷新、“22.2チャンネル”の立体的な臨場感を味わう。

1.2mのサウンドバーと重厚なサブウーハーを視聴者の正面、横方向に配置する。実勢価格¥79,200(税込)

BS8K番組の音声は3D(立体方向)サラウンドの22.2チャンネルで制作、放送されている。22.2とは、天井面の上層9、中層10、床面の下層前方3の計3層で22に、前方左右のサブウーハー2を足したチャンネル数。つまり部屋中が音響で包まれる環境だ。8K放送は映像で高精細なリアリティが得られるだけでなく、音声でも圧倒的な臨場感を伝えるフォーマットなのだ。

そもそも放送がモノラル→ステレオ→5.1→22.2とチャンネル数を増やしてきたのは、臨場感高めるため。しかしNHK各局などの公共視聴を除き、これまで家庭では誰も22.2チャンネルを正しく体験できなかった。8Kテレビを買っても、テレビ内蔵スピーカーからは単なる2チャンネルの音しか出ない。

しかし時代は変わった。シャープが初めて22.2チャンネルに対応したサウンドバー、8A-C22CX1を発表。22.2チャンネル出力が可能なシャープの最新8Kテレビ、CX1シリーズと組み合わると、このサウンドバーから目眩く立体音響が部屋いっぱいに拡がるのである。

しかし横長のサウンドバーだけで、どうやって22.2チャンネルもの立体音響を再現するのであろうか。そのための特別な技術が「オプソーディス」。鹿島建設とイギリスのサウサンプトン大学が共同開発した、前方のスピーカーで部屋全体にサラウンドを響かせる技術だ。

われわれが現実において発音体の方向や距離がわかるのは、脳が両耳に届く音の到達時間のわずかな違いを感知するからだ。つまりスピーカーからでも両耳に届く音に時間差をつければ、そこから方向や距離の違いを感じるはず。それを可能にするのが、周波数別のスピーカー配置と、音のキャンセル技術だ。リスナーの正面に高音、両側に中音、その外側に低音部を配す。さらに、狙った音が耳に届くよう音の波形を 90度ずらし、不要な音をキャンセルする。

その効果は目覚ましい。たとえば8Kの『大相撲』。本サウンドバーで聴くと呼び込みの声が高い位置から聞こえ、取り組みを観客全員が固唾をのんで見詰める時の暗騒音や場の緊張感も伝わる。勝敗が決着し、後方、横、上に歓声が盛りあがる興奮が味わえた。サッカーの試合中継では歓声の移動感や臨場感があふれ、コンサートライブではステージから発せられた音が広い会場に響きわたる様子を味わうことができた。

これまでさまざまなメーカーから立体音響が再生できるとの触れ込みでサウンドバーが提案されていた。しかし本サウンドバーは、音空間の華麗さ、音像の造形の精確さ、チャンネル間の緊密な音場感など、まさに傑作と呼ぶにふさわしい。放送新時代を見据えた注目の立体音響装置といえる。

スピーカー配置を刷新、“22.2チャンネル”の立体的な臨場感を味わう。

サウンドバー本体に横並びに配置されたスピーカーシステムから立体的な音響をつくり出し、臨場感を伝えてくれる。

麻倉怜士
デジタルメディア評論家。1950年生まれ。デジタルシーン全般の動向を常に見据えている。巧みな感性評価にファン
も多い。近著に『高音質保証!麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。

シャープ お客様相談室 TEL:0120-001-251

※Pen本誌より転載
スピーカー配置を刷新、“22.2チャンネル”の立体的な...