高精度で麗しい、自社ムーブメント搭載第一号機。
岩崎 寛(STASH)・写真photographs by Hiroshi Iwasaki
並木浩一・文
text by Koichi Namiki
ボーム&メルシエが、ついに自社ムーブメントを手にした。その「ボーマティック」を人気コレクション「クリフトン」に搭載した第一号モデルの出来が小気味いいほど秀逸だ。 そもそもボーマティックは、ボームが所属するリシュモングループ傘下のムーブメント専業ヴァルフルリエ社、リシュモン開発チーム、そしてボーム自身の協力の成果。イノベーションの進化が著しい業界の例にもれず、「最新が最良」を地でいくマテリアルを使い、期待以上のハイスペックが達成された。
最大のアドバンテージは、アンクルとガンギ車をすべてシリコン化したところだ。つまりは腕時計のチクタクの源である接触部分の磨耗を最小化した。ヒゲゼンマイもシリコン化し、機械式時計の弱点である帯磁を避けた。この3ポイントの改良は精度と耐久性の向上に直結し、しかもパワーロスを減じる。その他の改良も加えて、なんと120時間のパワーリザーブを達成した。そのムーブメントをCOSCクロノメーターをベンチマークに調整し、日差-4~+6秒で出荷するという。
その優秀な自社ムーブメントを、タイムレスなデザインの「クリフトン」にまず載せたのが慧眼だ。リベット形インデックスにランセット形時分針、カーブを施したサファイアクリスタル風防と、シースルーバックの仕様。工具なしで取り替えられるアリゲーター革ストラップのシステムに、50mの防水。隙なく十分なスペックを備えた40㎜サイズのラウンドウォッチは、使い続けるほど愛着がわくデザインだ。しかもウェブサイトから購入した腕時計を登録すれば、国際保証が1年延長される。
腕時計の典型的な悲劇的結末は、飽きてしまうことと壊れてしまうことだろう。「クリフトンボーマティック」は、それを回避する。「ボー」は、秀でて麗しいことを意味するフランス語「beau」と同音だ。男前なムーブメントの搭載第一号機は、買って損がない。
クリフトン ボーマティック