伝統技法を現代に継承する、魅惑のスケルトン
岩崎 寛(STASH)・写真photographs by Hiroshi Iwasaki
並木浩一・文
text by Koichi Namiki
フランクミュラーは、稀代の時計師が自らの名前を掲げるブランドだ。美観に目を奪われる時計が、機械としても群を抜いている。そうした腕時計ファンの理想を象徴するような「ヴァンガード7デイズパワーリザーブスケルトン」に、鮮やかなニューカラーがこの夏、登場する。
そもそもスケルトンは、歯車など時計のさまざまな部品を支える地板とブリッジを肉抜きし、骨組みを残して視線を透過させる伝統技法だ。言うまでもなく軽量化はされるが、性能や現世的な目的のためではなく、視覚的な美しさを引き出していくいわば引き算の作業である。
いっぽうフランクミュラーはその技法を再検討し、ゼロから構想した。既存の腕時計をモディファイするのではなく、もともと美しいスケルトンを創造することを選んだのである。V字・逆V字のブリッジ群がトノー形の空間を左右に貫くスペースパターンの構成は、スケルトンに対する既成の概念を覆す、斬新な独創だ。その結果として、空間を幾何学的・直線的に切り取ってみせる。見えない向こう側を見せるのではなく、視線の透過によって最も美しく映えるスケルトンなのである。
それができるのも設計から組み立てまでを一貫して行うことができる、フランクミュラーの実力ゆえだ。新色モデルはステンレス・スチールのケースにゴールドのブリッジ。ラグを排した一体構造のストラップは、輝くホワイト。初めてのコーディネートが、「ヴァンガード」の特徴であるケースフォルムのスポーティさを引き立てる。コレクションに共通するオープンワークを施した針は、時分針だけでなく、ホワイトのセクションリングが囲うスモールセコンドの針にも採用された。
自社製ムーブメントは、約日間の驚異的なロングパワーリザーブの性能を秘める。デザインに優れた腕時計が性能でも秀でており、さらに最新のモードを纏う。魅力に魅力を重ねた新作なのである。
ヴァンガード 7デイズ パワーリザーブ スケルトン