“フルサイズ・ミー”を止めないで!? 頼れるアイツが、...

東京車日記いっそこのままクルマれたい!

第86回 CADILLAC ESCALADE / キャデラック エスカレード

“フルサイズ・ミー”を止めないで!? 頼れるアイツが、エスカレードでエスコート

構成・文:青木雄介

編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

存在感とラグジュアリー性を表現した“押し出し系”のフロントビュー。

アメリカ車を語る時によく使われる「フルサイズ」という言葉。乗用車最大サイズをフルサイズと呼ぶんだけど、このキャデラック エスカレードはまさにそう。実際見るとめちゃくちゃ大きくて、サイズは完全にトラックだね。大型SUVが減少傾向にある日本においてはますます目立つ。ライバルだったリンカーン ナビゲーターを販売していたフォードが撤退して、エスカレードはアメリカン・フルサイズSUV、最後の牙城となってしまった。
4年前にモデルチェンジした第4世代のエスカレードは、キャデラックのプレミアム性をより高めてきたモデル。フロントグリルのクロムメッキ加工で押し出しを強めながらも全体をシャープで都会的な印象にし、搭載されるエンジンは6・2ℓのV型8気筒OHVのみ。ライバルのリンカーン ナビゲーターが3・5ℓエンジンを搭載し始めて10年以上が経つのに、ダウンサイズに踏み切らないのは、大排気量エンジンならではのトルク感豊かな乗り味にこだわっているからなんだ。
エスカレードのボリューミーで陽性な室内空間はアメリカンラグジュアリーそのもの。6・2ℓのV8エンジンは、アクセルを踏めばさながら巨体が異次元に吸い込まれるよう。この見下ろす視座の重たい塊が、咆哮し加速する様はドラマティックだし、伝統の大排気量イズムも感じられる。よく静音もされていて、自らの車重でギャップを踏みならして走る感じがフルサイズのSUVらしさでもある。欧州の高級SUVと比べるとアイドリングでもOHVエンジンのざらついた感じがあるし、足まわりはエアサス仕様よりも武骨に思えるかもしれないけどね。

これぞアメリカンな、フルサイズSUVの王道。

でもこれも、エスカレード唯一無二の乗り味であり、その存在感の前には「それがどうかした?」って感じですよ。そもそもフルサイズのSUVオーナーは、ちゃんと日本で乗れているだけで尊敬に値するんだ。まずトラックサイズの駐車場が必要で、立体駐車場には入らないし、コインパーキングもほぼ無理。擦れ違いが困難な都内の路地には入れないし、混み合う高速のサービスエリアではいちばん端っこが定位置。言い換えれば、これらの日本の道路事情に「それがどうかした?」と言える人だけが、キャデラックのフルサイズSUVに乗る資格がある。

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