超高音質を実現させた、理想の素材。
こんな上質で、音の粒子が非常に細かく、生命力に満ちたイヤホンサウンドなど、聴いたことがない。これまで大小さまざまなメーカーのイヤホンを試してきたが、finalブランドのフラグシップイヤホン「A8000」はまったく次元が違う。音が拡がる軌跡の滞空性、階調感の細かさ……など、まさにハイエンドと形容するにふさわしい。
なぜ、これほどの音を小さなイヤホンが手に入れることができたのか。要因はふたつ。ひとつが開発したSNEXT社の研究開発姿勢だ。同社では、「何がいい音なのか」という根源的な疑問から、音質を向上させる方向性をさまざまに探ってきた。その結果、「音圧や周波数特性の操作では実現できない音」で、それは時間応答の俊敏さから来る「透明感のある音」とした。音の時間的な変化に即応する音ということだ。それを実現するには人為的な操作にて音を加工するのでなく、根本的に素材から新規開発しなければ、刮目の音はつくれないと喝破した。
複数ユニットで実現した、常識外れの音質。【ソニー IER-Z1R 黒モノ家電コンシェルジュ】
換言すると「入力信号に敏感に反応し、入力が止まったらすぐに振動を止める振動板」の開発が必要だった。A8000の画期は、理想の振動板を求めて誰もが挑戦し、誰ひとり成功しなかったトゥルーベリリウム振動板の開発、搭載に成功したことだ。ベリリウムはスピーカー振動板として、強い剛性、速い伝搬速度など理想条件を備える材料だ。しかしもろいので、これまではイヤホンでの実用化が難しかった。
SNEXT社では5年をかけて素材メーカーと共同開発し、ついにトゥルーベリリウムのみの振動板形成に成功した。トゥルーベリリウムドライバーは非常に繊細なので、ハウジングの内部容積の違いが音質に大きな影響を与える。そこで内部を4分割し試作を繰り返して、最適な内部容積を見出したという。
私がプロデュースした、UAレコードの情家みえ『エトレーヌ』から第1曲「チーク・トゥ・チーク」を聴くと、音の表面がていねいに磨かれ、でも、ところどころにトゲがあり、それがブリリアントに光るというプロデュースの狙いを、見事に再現している。ドラムスのブラシの立ち方、ベースのキレ、ピアノの細やかな表情感などもいい。山本剛のピアノ。1音1音の表情の濃密さと同時にフレージングに抑揚感があり、そこから光彩感が出るという、彼がもっているピアニズムが、このイヤホンは繊細に描く。
ボーカルは麗しさ、上質さが聴けた。クリーミーで美しいだけでなく、リアリティをもちながら粒立ちが細やかなのだ。音楽がもっている生命感が巧みに表現され、音楽の愉しさが感じられた。潔癖さと高性能さと音楽性の高さを併せもつ、たぐいまれなイヤホンだ。
イケアの価格でSONOSの高音質が手に入る、スマートスピーカー「シンフォニクス」が日本上陸。
キャリーケースはアルミ製。内部にはシリコンを使用し、ケースにも素材のこだわりが詰まっている。
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