レジ打ちバイトが見つかった俳優が問いかける「働くって何だろう」
<80年代の人気俳優が、スーパーで「バイト」をしていた姿を写真に撮られ話題になり、それが「働くとはどういうことか」ということを喚起してさらに注目を集めている>
売れない俳優のレジ打ちは惨め?
1日のうち最も長い時間を占める「仕事」。好きな仕事で食べていければ幸せだが、そうでない人も多いだろう。「働くこと」ってなんだろう? などと考えたことはないだろうか?
米国で1980年代、お茶の間で人気だったテレビ番組「コスビーショー」に出演していたが現在はすっかり表舞台に姿を見せなくなった俳優が、食料品店で「バイト」をしていた姿を写真に撮られて話題になった。
俳優の名前はジェフリー・オーウェンズだ。1984〜1992年まで米NBCで放映されていたコメディ番組にレギュラーで出演していた。最近はあまりテレビで姿が見られていなかったようだった。
ある時、ニュージャージー州のスーパーマーケット・チェーンで袋詰め作業をしている姿を、買い物客の1人に写真を撮られ、英デイリーメール紙(8月30日付)に掲載されてしまった。アルバイトをしていたのだ。同紙は「ここのスタッフの時給は11ドル(約1200円)」と書き、写真を撮った人物の談話として「すごく気の毒に思った。あれだけ長い間テレビに出ていたのに、レジ係になっちゃうなんて」という言葉を掲載した。
デイリーメールに続き、米大手FOXニュースもオーウェンズがスーパーで働く姿を報じた。
プロ選手引退後に床掃除でしのいだ人気俳優も
こうした報道は、世間から「Job shaming」(人の職業を辱める行為)と受け取られた。そしてそんな報道に反応して、世界中のファンやハリウッドから、オーウェンズを支持する声が上がった。アメリカン・フットボール(NFL)の選手から俳優になったテリー・クルーズは、「俺はNFLを引退した後、床掃除をしていた。必要ならまたやる。勤勉に働くのは何も恥ずかしいことなんかじゃない」とツイートした。
他にも自身のアルバイト経験を投稿する俳優やクリエーターが相次ぎ、#ActorsWithDayJobs(定職を持っている俳優)というハッシュタグがツイッターでトレンド入りした。
全米芸術基金(NEA)が2014年に発表した調査によると、本職が別にあり2つ目の仕事として芸術家をしているという人の割合は、全芸術家の11.6%を占めた。ここでいう芸術家には、アナウンサーやデザイナー、プロデューサーなど多様な職業が含まれる。俳優だけに限ると、俳優業以外の仕事を本職としている人の割合は20.8%と倍近くになった。NEAが「本職」と定義しているのは、「その人が最も長い時間就労している仕事」であり、本職が俳優であってアルバイトを別にしている人はこの数字に表れていない。そのため、どちらが本職にせよ食べていくために「二足の草鞋を履いている俳優」とすると、この数字はもっと高くなる可能性が大きい。