AI時代に「超高収入」ファイナンスの専門職は生き残れるか
AI(人工知能)時代になると、どんな仕事の成果が求められるようになるのか。M&Aや投資など、ファイナンスの技術を用いて意思決定を行う専門職にも影響は及ぶのだろうか。
昨今、「AI(人工知能)に奪われる仕事」が話題となり、メディアでもよく取り上げられる。ウエーターや工場労働者、事務員、販売員、トラック運転手だけでなく、ほとんどあらゆる業種・職種に影響が及びそうだと予測されている。
M&Aや投資など、ファイナンスに携わる専門職はどうだろう。それを考えるヒントは、AI時代になると、どんな成果が求められるようになるかという点にありそうだ。
ファイナンスに関わる業種は「超高収入」だ。それは、お金を右から左に流すだけの、いわゆる「マネーゲーム」ではなく、ファイナンスという技術を用いて大きなお金に関わる意思決定を行い、他の企業より大きな影響力をビジネスの世界に及ぼしているからだと、正田圭氏は説明する。
1986年に生まれ、15歳で起業。M&Aの最前線で活躍する若き実務家である正田氏は、このたび『ファイナンスこそが最強の意思決定術である』(CCCメディアハウス)を上梓。ファイナンスの専門職や、企業の財務部、経理部、経営企画室に属する人に限らず、あらゆるビジネスパーソンに向けて、ファイナンスを習得し質の高い意思決定を行うための術を伝授している。
正田氏の持論は、「意思決定を伴わないファイナンスに価値はない。ファイナンスを伴わない意思決定も同じである」というもの。ここでは本書から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。第1回は「1章 ビジネスキャリアを加速させる秘訣はファイナンスにあり」より。
AI時代に求められるたったひとつのこと
ファイナンスを扱う業種が「超高収入」になった背景には、科学技術やコンピュータなどの目まぐるしい進歩に合わせて、人々の働き方が劇的に変化したことがあるのは間違いありません。
数年前、英オックスフォード大学でAI(人工知能)の研究を行うチームが「雇用の未来」という論文を発表しました。
この論文は、手先の器用さ、芸術的な能力、交渉力、説得力など、コンピュータ化の障壁となり得る仕事特性を抽出して702の職種を評価し、「今後、10年から20 年程度の期間で、約47%の仕事が機械によって自動化される」と予言したのです。
この予言が産業界を驚かせたのは、これまで人間にしかできないと思われた仕事さえもが「消える仕事」として指摘されていたからです。
目につくところで挙げていくと、会計士、銀行の融資担当者、不動産ブローカー、保険の審査担当者、苦情の処理・調査担当者など。
こうした仕事が機械にとって代わられるということは、技術の進歩がそれだけ速くなっていることの証しなのでしょう。
ビジネスパーソンに求められるビジネスの成果にも、大きな変化が訪れています。