首相側近のステイホーム違反を擁護した政府に物申す!! ...
LONDON ロンドン

首相側近のステイホーム違反を擁護した政府に物申す!! 風刺ネーミングのビールが大人気。【コロナと闘う世界の都市から】

文:宮田華子

ブリュードックはデザイン性の高いパッケージやユニークなネーミングで知られるブルワリー。「バーナード城 目のテスト」はドライホップを使ったIPA。パイナップル、マンゴ、ライムの皮の風味が漂う。330mlx12缶入りで16.95ポンド(送料別)。画像はブリュードッグのHPのキャプチャ画面(© Copyright BrewDog 2015-2020)

6月1日からロックダウン緩和に向かっているものの、ステイホームの方針がしばらく続くイギリス。パブをはじめ飲食店の店内での営業再開は7月以降の予定なので、いまだ家飲みが続いている。そんな中、イギリスのクラフトビール醸造所のキング的存在である「ブリュードッグ」が変わった名前のビールを限定生産した。その名前は「バーナード城 目のテスト(Barnard Castle Eye Test)」。

ことの次第はこうだ。イギリス政府は3月後半以降、市民に厳しい行動規制を課してきた。特に移動制限は何度も説明され、「感染したと思っても家に留まり、家族・同居人とともに“自宅で”自主隔離する」がルールである。しかしジョンソン首相の側近中の側近であるドミニク・カミングス首相アドバイザーがこのルールを破っていたことが発覚したのだ。

カミングスは感染の症状が見られたため、3月30日に自主隔離に入った。しかし翌日、ロンドンから約420kmも離れたイングランド北部の町ダラムにある家族所有の別荘に移動した。加えてロンドンに戻る直前の4月12日、別荘から約48km離れたバーナード城に家族で訪れていたことも判明した。

5月22日に大手新聞2紙がこの事実を大々的に報道。ステイホームを遵守している人々の怒りを買ったが、ジョンソン首相が徹底的に擁護したため、さらに炎上。内閣支持率が4日間で20%も急落した(Savanta/The Independent調べ)。政府は仕方なく5月25日にカミングス本人の会見を開いたが、そこで「バーナード城へ行ったのは、“目のテストのため”」「コロナの症状が出て以来目の調子が悪く、帰りの運転に耐えられるかどうか短距離ドライブで確認したかった」と苦しい言い訳をした。

ジョンソン首相はこのスキャンダルの火消しにやっきになっているが、政治に対し痛烈な風刺で返すのはイギリス人の得意とするところ。ブリュードッグは5月26日には政府に抗議の意味を込めた限定ビールのネーミング4案をツイッター上で発表。フォロワーの意見を反映した上で、翌27日「バーナード城 目のテスト」に決定。初回出荷日に完売するほどの人気に。

我が家も購入を試みたが、初回出荷には出遅れてしまった。「バーナード城 目のテスト」の利益は、ブリュードッグ社が現在生産している抗菌ハンドジェルの費用に回り、すべて医療関係者に寄付されるとのこと。またも飲む理由ができてしまったが、政治参加と寄付の両方に繋がるのだから、よしとしよう。ちなみに、このビール、すでにジョンソン首相には1箱送付済みなんだとか。

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