ひと皿に創意あふれる、札幌で活躍する食の革新者たち。
札幌のレストランはいま、圧倒的な“個”の時代を迎えている。素材を探求し供する空間を研究する、ユニークなスタイルを築いたシェフたちの世界を追う。
「タカオ」のシェフ、高尾僚将(ともゆき)さんはフランス料理とイタリア料理の経験をもつ。ローカルな食材をうまく取り入れるシェフは多いが、高尾さんが目を付けたのはその中でも森の食材。札幌市に近い支笏(しこつ)湖畔のイタリアンレストラン「アズール」でシェフを務めたことが転換点になった。
在任中に朝の野山を歩き、山菜やキノコを採るのが日課になると、季節に対する感覚が研ぎ澄まされたという。山野草の知恵を与えてくれたのは、野山で会う地元の人々。なかでもアイヌの方々からは、食べたことのない植物とその保存法を学び、いまも交流が続く。こうして、高尾さんの料理は野生植物の味や香りというテーマに特化した。
コースは野山で実際に採集した多種類の“森のスパイス”のプレゼンテーションから始まる。シグネチャーの「山のエキス」は、高尾さんの通う森を象徴するふたつの樹木、エゾイソツツジとシラカバのエッセンスを泡にして浮かべた一品。レシチンを使わない、はかない泡を飲み込むたび、森を歩く時の香りを追体験する。どこか懐かしい香りだけれど初めて口にする味わいは、食べる人の感性をゆさぶる。シェフとともに森へ出かけるような味覚体験だ。
喧騒を離れた邸宅のリビングのような空間。迎えるゲストはひと晩3組限り。テーブルやチェアはシェフの郷里・旭川市のブランド、カンディハウスのもの。
タカオ
北海道札幌市中央区南3条西23-2-10
TEL:011-618-2217
営業時間:18時~23時(完全予約制)
定休日:日
※サービス料10%
アクセス:JR札幌駅からクルマで約10分
https://ha00100.gorp.jp