「民族音楽は、自分をリセットできるマッサージのようなものです」(サラーム海上)
―純米酒、ふだん飲み。私のSAKANA vol.3―
酒の味が引き立つような味わい深い逸品を「肴」にたとえ、各界で活躍する人物に愛用品を紹介してもらう新連載がスタート。ときに偏愛すら感じさせる、彼らの熱い思いを探ります。
4年目に突入したNHK ‒FMでのナビゲーターに加え、今秋からJ ‒WAVEでも新番組がスタート。中東をはじめとするエキゾティックな音楽の魅力を、軽快な語り口で伝えてくれるサラーム海上さん。自宅に保有する音源は、CDだけでおよそ2万枚。好きが高じてこの世界に入り、思い入れの強いアルバムが無数にあるため、その中からSAKANA的一枚は「とても絞り込むことができない」といいます。それでもプロとして熟慮を重ね、選んでくれたのが『世界民族音楽大集成』。CD104枚組という超大作です。
キングレコードが1992年に発売したこの作品集は、民族音楽学者の小泉文夫氏がフィールドレコーディングしたもの、フランスの老舗レーベル「オコラ」が録音したものなどで構成されており、世界各地の貴重な音源が数多く収録されています。民族音楽は島唄や雅楽のように匿名性が高く、ごく限られたコミュニティーで継承されます。そのため、いまでは地球上から消滅した音楽もあるといいます。
「たとえば、木をくり抜いたラッパを使うコンゴの音楽が収録されています。ある時、アメリカの好事家が木のラッパを買って持ち帰ったため、その音楽自体が失われてしまったそうです。その後、購入者が謎の死を遂げたというオチがつくのですけれど」
数ある音源の中でサラームさんが特に好きなのは、シリアやイラク、アルメニアの宗教音楽。
「仕事柄どうしても音楽を聴きすぎてしまうのだけど、リフレッシュしたいときに聴くんです。僕にとってはマッサージのようなもの。自分をゼロにリセットできます」
どうして、そんな気分になるのでしょうか。
「民族音楽って、とてもピュアなもので、さまざまな音楽へ派生するもととなるんです。基本に立ち返る大切な時間を提供してくれるからかもしれませんね」
仕込み等の際に日本各地の酒蔵で唄われてきた「酒づくり唄」にも関心を寄せるサラームさん。テクノ世代として育ち、現代の音楽を愛する彼が、時折立ち止まる場所。そこには原石のように粗削りなのに、スッと心に染み入る音楽があったのです。(文:小久保敦郎)
サラーム海上 音楽評論家
●1967年、群馬県生まれ。中東やインドを定期的に訪れ、現地の音楽シーンをフィールドワークし続けている。近年は中東料理研究家としても活躍、各地で出張メイハネを開催。
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