日本ワインの礎を築いた男が、自らブドウを交配してつくった赤。

日本ワインで乾杯!We Love Japanese Wine!

#21|
鹿取みゆき・選&文
尾鷲陽介・写真
selection & text by Miyuki Katori
main photograph by Yosuke Owashi

マスカット・ベーリーA 2014

日本のワインづくりがたどってきた道を振り返る時、私の脳裏にすぐに思い浮かぶ人物、それは川上善兵衛さんです。善兵衛さんは、生まれ育った郷土の農民のために生涯を捧げた人でした。ところは新潟県上越地方の高田平野のはずれ、かつて「岩の原」と呼ばれていた土地です。その名の通り岩がゴロゴロと転がっており、稲や野菜などが育たない不毛の地でした。庄屋の息子に生まれた彼は、まわりの農民たちの貧しさを目の当たりにしながら育ったのです。

7歳で父を亡くして当主となった時、善兵衛さんが考えたのが農民たちを救うことでした。ブドウだったらこの土地でも育つのではないか。それでワインをつくってみてはどうかと、ブドウ栽培に乗り出したのです。しかし欧米品種はどうもうまく育たない。それでも諦めず、今度は自らブドウを交配して、岩の原に適した品種をつくり出そうとします。

メンデルの法則を覚えていますか? 2種類のブドウを掛け合わせてできた種を植えてみると、房の形や大きさ、ブドウの粒の大きさ、色、味わい、香りなどが異なるさまざまなブドウができてきます。彼は1万種類以上のこうしたブドウの中から、マスカット・ベーリーAという赤ワイン用のブドウ品種を選び出します。これがなんといまでは、日本を代表する赤ワイン用品種になっています。

「マスカット・ベーリーA」は、善兵衛さんが創業した「岩の原葡萄園」でつくられたワインです。善兵衛さんの意志を継ぎ、この地でワインをつくり続けている上村宏一さんと建入一夫さんらが、必ずしも気候に恵まれているとは言えないこの土地で有機栽培にまで挑戦し、さらに培養酵母を添加せずつくったワインです。グラスに注ぐと、ピュアなドライプルーンやイチゴの香りが立ち上ってきます。渋味はほとんどなく、艶やかで、品格が感じられます。

少し涼しくなってきた、いまの季節にぴったりの味わいです。

日本ワインの礎を築いた男が、自らブドウを交配してつくった赤。
善兵衞さんが交配してつくり出したこの品種。母方がベーリー(アメリカ系の品種)、父方がマスカット・ハンブルグ(ヨーロッパ系の品種)で、1927年に選別されました。生食用も兼ねていたために、日本全国に広がることができたのかもしれません。岩の原葡萄園では全生産量の半分以上をこの品種が占めています。

マスカット・ベーリーA 2014

ワイナリー名/岩の原葡萄園
ブドウ品種と産地/マスカット・ベーリーA(新潟県上越市大字北方)
容量/720ml価格/¥4,320
問い合わせ先/岩の原葡萄園
TEL: 025-528-4002
http://www.iwanohara.sgn.ne.jp/

プレゼント

載「日本ワインで乾杯!」では毎回、ご紹介するワインを1名の方にプレゼントします。 第21回「マスカット・ベーリーA 2014」のご応募の締め切りは、2016年10月27日(木)まで。ふるってご応募ください。  ※当選者の発表は賞品の発送をもってかえさせていただきます。未成年者のご応募はできません。ご応募は日本在住の方に限ります。なお、伊豆諸島(大島・八丈島を除く)および小笠原村(小笠原諸島)への配送はできません。ご応募にあたっては、弊社メールマガジンへのご登録が必要です。

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日本ワインの礎を築いた男が、自らブドウを交配してつくった赤。