寛永2(1625)年創業。金沢一の老舗酒蔵「福光屋」が、純米酒だけを造...

寛永2(1625)年創業。金沢一の老舗酒蔵「福光屋」が、純米酒だけを造る理由。

写真・文:中島良平

「酒造りにおいては、データに基づいた科学的な視点と、タンクの中で発酵が進む酒の面(つら)を目で見ながら、その変化を読み取る目視も非常に大切です」と語る、杜氏の板谷和彦さん。

金沢で最古の酒蔵「福光屋」では、米と水のみを用いる純米づくりの酒の魅力を身近に感じてほしいと、毎年10月から4月にかけて蔵内を公開している。酒離れが進んでいるといわれる時代だが、日本にはたしかに誇れる酒文化が受け継がれている。食中酒としての日本酒の魅力は、米と水というシンプルな出合いから生まれる酒にこそ宿るはずだ。米と水による発酵の過程、質こそが重要であるに違いない。

現在、米と水だけを用いた純米酒の生産量は日本酒全体の20%に過ぎない。戦後の食糧難の時期、米を酒造りに回すのがもったいないという事情のなかで「米を使わない酒造り」を、つまりは醸造アルコールや糖類などを加えた酒造りを国が推進した背景がある。だが、かつては日本酒の独壇場だったアルコール飲料市場において、ビールや焼酎、ワインなどのシェアも高まり、日本酒は危機的状況に陥った。

そこで福光屋では、古くから日本で飲み続けられてきた日本酒が未来に向けてどうあるべきか、自らに問いかけた。酒造りの歴史を見つめ直し、かつてのように米と水だけを用いた純米酒造りに専念すべきではないか、と。良質な米を安定的に、豊富な量で確保するため契約農家とともに土づくりから取り組み、信頼関係を築いてきた歴史もある。そして、添加物を用いた酒造りを徐々に減らし、純米酒だけを造る酒蔵となったのだ。

仕込み水に用いられるのは「恵みの百年水」。白山の麓に降った雨が地中に染み込み、100年の月日をかけて酒蔵が位置する金沢市内の地下150mの場所に到達する。

酵母を高密度に培養させる酒母を撹拌し、適切な発酵状態へと促す「櫂入れ」の様子。

米の発酵を利用した化粧品、酒も各種銘柄が並ぶSAKE SHOP福光屋 金沢店は蔵に隣接し、蔵元見学はここから始まる。

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