長崎・壱岐島に誕生した「ISLAND BREWERY」が、“魚に合うビ...

長崎・壱岐島に誕生した「ISLAND BREWERY」が、“魚に合うビール”を追求する理由

写真:高田 望 文:小長谷奈都子

漁師町の中心に立つ造り酒屋がブルワリーに生まれ変わった。1984年に島内の6蔵で壱岐焼酎協業組合を立ち上げてからは単独での製造を中止していたため、この地での酒造りは37年ぶり。

ビールのおいしい季節がやってきた。クラフトビール文化が定着し、ブルワリーが全国各地に存在するいま。醸造家の思いや創意工夫が詰まった個性的あふれる味わいで、ビールを飲む楽しみはいっそう広がっている。「魚に合うビール」をコンセプトに掲げるのは、この春、新たに誕生した「ISLAND BREWERY」。場所は九州北部の玄界灘に浮かぶ長崎県の離島、壱岐島。長崎県唯一のブルワリーだ。

タップルームのカウンターでは、醸造所の発酵タンクを眺めながら、できたてビールを味わえる。トートバッグやキャップ、グラウラーなどのオリジナルグッズも販売。

壱岐は青い海と豊かな自然に彩られた、南北17km、東西14kmの小さな島。ウニやイカをはじめとする新鮮な魚介類やブランド牛の壱岐牛など、美食の宝庫。そして、16世紀までその歴史を遡る麦焼酎発祥の地でもある。ISLAND BREWERYを立ち上げたのは、明治時代より代々焼酎や日本酒造りに携わってきた原田酒造の5代目で、麦焼酎の製造に20年近く邁進してきた原田知征。「おいしい食べ物とおいしいお酒は切り離せない関係。壱岐は焼酎造りが盛んな地で、7蔵が麦焼酎を造り、少し前には日本酒造りを復活させた蔵もある。ここにクラフトビールが加われば、島がもっと楽しく、面白くなるに違いないと考えたんです」と転向の理由を話す。


ISLAND BREWERYがあるのは島の北端にある漁師町、勝本浦。街の中心で造り酒屋を営んできた築130年以上の実家を大改装し、醸造所とタップルームを新設。地元の人たちが見慣れた風景をできるだけ損なわないよう、外観や建具などはそのまま使った。タップルームは壁や床にビールを思わせる色を塗り、落ち着いた雰囲気に仕上げている。

定番3種、季節限定4種のビールのほか、ジンジャーエールなど自家製ノンアルコールドリンクも。

造り酒屋時代の雰囲気を大切にしたという醸造所内。左右に並ぶのが発酵タンク、突き当たりに見えるのは、麦芽からビールの元になる麦汁を造る、ブルーハウスと呼ばれる設備。

1 / 3p