徳島県産和牛のモモ肉は、赤身が多いながらも程よくサシの入った、バランスのいい肉質。オーブンで加熱したらフライパンで両面を焼き上げ、外は香ばしく、中はしっとりミディアムに仕上げる。そのまま食べてもおいしいが、赤ワインソースとビーツのピューレに合わせると、さらに酒が進む。器は親交のある陶芸作家・石井啓一の作品。「徳島県産和牛のステーキ」は2人前で¥4,180(税込)。写真のように1人前ずつ取り分けて提供してくれる。
日替わりの黒板メニューに並ぶ、サラダやマリネ、グラタン、ステーキの文字。「ビストロ11」の魅力のひとつが、シンプルでわかりやすい品書きだろう。なかでも人気の高いメイン料理「徳島県産和牛のステーキ」は、肉を食らう醍醐味にあふれた一皿だ。外はこんがり、中はしっとりとミディアムに仕上げられたモモ肉からは、赤身の新鮮な旨味と香ばしくも甘い脂のおいしさがあふれ出す。「塩とコショウを振ってローストするだけ」と松浦真吾シェフは話すが、ジビエ料理で名高い長野「オーベルジュ・エスポワール」で磨いた焼の技術が光る料理だ。一方、タラのポワレには柚子、イカと香草のサラダにはあん肝ソースを合わせるなど、和の素材を多用する。
「目黒『ルヴェール・ヴォレア・トウキョウ』のシェフだった時、パリ10区の本店で数カ月、修業を積みました。本場の料理人がフレンチに日本の食材を使う姿を見て、感銘を受けたんです」
「赤蕪と鰆の粒味噌マリネ」には奄美大島の茶請け味噌を忍ばせて、コクと甘味をプラス。慣れ親しんだ和の味わいが、白バルサミコの酸味とハーブであるディルの爽快な香味と重なれば、たちまちワインのよきアテになる。身体に染みて、ほっと安堵するおいしさだ。
これら親しみやすい味わいに寄り添うのは、フランス産のナチュラルワイン。白ならシュナンブラン、赤ならガメイなど、飲み口のやさしい銘柄を中心にセレクトする。また白花豆を使ったモンブランは、コク深い甘味が酒を誘うため、左党なら最後までワイン三昧もいいだろう。
旬の赤カブとサワラに、白バルサミコとディルを合わせる。マリネのアクセントになる奄美大島の茶請け味噌は、文字通り、お茶請け用の粒味噌。甘味とコクがあって、塩味は控えめだ。サワラをはじめとした旬の魚介は、松浦シェフが直接、朝に豊洲市場で買い付ける。また野菜は全国20軒以上の農家から直送される有機のものだけを使用。千葉県産の赤カブは噛むほどに甘い。「赤蕪と鰆の粒味噌マリネ」¥660(税込)
白インゲン豆の一種である白花豆。茹でて濾すと、白あんに似たような味わいで、後を引かない、さっぱりとした甘さ。舌触りも楽しく、また生クリームが加えられているため、コク深い余韻を残す。コーヒーもいいが、左党なら、軽いボディの白ワインと合わせるのもいい。「白花豆のモンブラン」¥880(税込)
ワインはフランス産のナチュラルワインのみ。ボトルは赤、白、ロゼ、オレンジ、泡などを日替わりで合計30種、1本¥4,950(税込)〜。グラスは赤・白を日替わりで2〜3種揃える。1杯¥770(税込)〜。白はソーヴィニヨンブラン主体の「ブラン2019/ラ・ソルガ」(左)、赤はガメイ100%の「ボジョレー・ヴィラージュ タンタシオン2018/ジャン・クロード・ラパリュ 」 (右)、またオレンジワイン「トリオ2019/ドメーヌ・グロス」(中)などが揃う。
天井高の店内。奥にはテーブル席もある。松浦シェフは「オーベルジュ・エスポワール」や、パリにある自然派ワインのビストロの東京支店「ルヴェール・ヴォレア・トウキョウ(現在のメグロ・アンジュール)」、代々木上原のビストロ「アエル」を経て独立。ちなみに店名の由来は、シェフと店を手伝う奥さまが、ともに身長180cm以上あるから。ふたり並ぶと数字の11に見えるのだとか。店のオープンも2020年11月11日。