品川にオープンした中華酒場の名物は、価格も味わいも本場...
写真:中庭愉生 文:岡野孝次

品川にオープンした中華酒場の名物は、価格も味わいも本場さながらの北京ダック

北京ダックマニア
品川
本場さながらの北京ダック
料理に合う中国茶サワーが揃う
調理場を眺めるカウンター席あり

「北京ダック 中」は3〜4人前の分量。皮、もも肉、むね肉を切り分けて提供する。注文ごとに焼き上げるため、オーダーしてから30分~1時間ほど時間が必要。自家製の甜麺醤(テンメンジャン)は甘さ控えめでやわらかな塩味が漂い、烤鴨餅(カオヤーピン)も小麦の香りが濃厚で食欲をそそる。¥3,278(税込)

日本では高級中華店で、うやうやしく飴色の皮のみを食べるイメージがある北京ダック。しかし本場・中国では大衆食堂でも提供され、小麦香る烤鴨餅(カオヤーピン)にアヒルの身までたっぷりと包むのが習慣だ。2020年10月、品川にオープンした「北京ダックマニア」では、限りなく北京のローカルプライスに近い、2人前2000円台からダックを提供。お通しには余った骨でとったガラスープを添えるなど、その旨味を使い切る。厨房がガラス越しによく見え、ダックを焼く工程が眺められるのも楽しみのひとつだ。

北京ダックといえばつい“焼く”ことに目が行きがちだが、「実は乾かす作業も大切」と店長の井上辰俊さん。ダックは捌かれた後に塩揉みされ、腹に薬味を詰めて軒先に吊るされるが、サーキュレーターを使って体内にも風が送り込まれることで、身と皮の境界がはっきりしてくる。この作業を経た後に表面に水飴を塗るのだが、こちらも塗っては乾かしを繰り返してから、約200℃の釜で焼き上げる。水飴を十分にまとったダックの皮は、パリパリを通り越し、カリカリした食感が秀逸な旨味の塊に。噛み締めると心地いい食感の向こうに、ダックの濃厚な脂が広がる。もも肉のしっとりとした舌触り、むね肉の淡白な食感が好対照で、口に運ぶたび、味覚の波状攻撃が押し寄せる。合わせるなら、店で抽出する中国茶のサワーがおすすめ。ナチュラルワインもグラス500円台で揃うため、酒場感覚で北京ダックが楽しめる気安さも魅力的だ。

品川駅高輪口から徒歩3分の飲食店街「品川横丁」にオープン。『ミシュランガイド東京』のビブグルマンにも掲載された「餃子マニア」の系列店で、軒先でゆったりとダックが回転する機械が目印。ちなみにこのマシン、中国から取り寄せた北京ダックを焼く機械だが、日本では消防法で使用できないことが判明。いまはダックの乾燥場所として重宝されている。

ダックを吊るしサーキュレーターで乾かしている。ちなみに料理長の峰村武志さんはもともと中華の料理人で、現地の北京ダック調理学校で研修を受ける予定だった。しかしコロナの影響で移動が叶わず、特別に頼み込んでリモート授業で技術を習得したという。シェフを招聘するのではなく社員が調理を担うのは「日本人の感覚も活かした新たな味をつくっていく」という方針からだ。

約1日をかけて、いくつもの工程を経て完成する北京ダック。乾かしながら、水飴を複数回塗る。窯で焼いた後、仕上げに高温の油をかけることで皮はさらに香ばしくなる。盛り付けの際は、皮と身の間の脂を削ぎ落とさないようにカットする。

焼豚とブルーチーズ(税込¥968)は、北京ダックと同じテンメンジャンに漬けて釜で焼き上げる。肉汁だけでなく、まろやかな甘みの凝縮感とブルーチーズの酸味が酒に合う一品。雲南省のプーアールハイ(税込¥495)。酒のグラスには、中国語で映画やアニメの名台詞が記される。

品川にオープンした中華酒場の名物は、価格も味わいも本場...