祐天寺「もつやき ばん」店主の閃きが伝説に、 レモンサワー誕生物語

祐天寺「もつやき ばん」店主の閃きが伝説に、 レモンサワー誕生物語

写真:宇田川淳 文:小久保敦郎

ジョッキの半分まで焼酎を注ぎ、瓶入り炭酸水とレモンを添える。それがもつ焼き屋の伝統を受け継ぐレモンサワー。搾ったレモンを搾り器に積み上げ、レモンタワーをつくる客がそこかしこに。

午後4時。夏のまだ強い日差しが残る夕刻、「もつやき ばん」の軒先にのれんが掛かる。すると常連と思しき客がひとり、またひとりと店内へ吸い込まれていく。席に座ると、どの客も口を揃えたように「サワーひとつ」とひと言。やがて目の前に焼酎が入ったジョッキと瓶入り炭酸水、そして切り口も鮮やかなレモンが1個運ばれてくる。

焼酎を炭酸水で割り、レモンで味付けするだけ。シンプルで飲み飽きず、料理にも合う。そんなレモンサワーのつくり方を誰が考案したのか定かではない。だがレモンサワーの名付け親で、そのおいしさを広めた店として、「もつやき ばん」の名は歴史に刻まれる。

時は昭和の東京オリンピック前夜に遡る。店主の小杉潔さんは、少し遠い目をして当時のことを話し始めた。

「親が東京の中目黒で家を建て直すことにしてね。そうしたら、兄がもつ焼き屋をやりたいって言い出した。昭和33年、僕が高校生の時でした」

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