いま改めて、デニムが気になる。ここ数年、ファッションシーンではそうした声が大きくなっている。2000年代のプレミアムデニムの大流行以降、モードの表舞台から姿を消していただけに、味わいのある表情が新鮮に感じられるはずだ。そんな注目のデニムを洗練されたセンスでモダンなアイテムに昇華させたのが、イタリアのグッチだ。ゆとりのあるボクシーシルエットのワークジャケットには金ボタンが配され、あたかもブレザーのように上品な佇まい。着丈は短めで、袖も手首がのぞく7 分袖。サイズが合わないヴィンテージをわざと着るようなアンバランスさが愉しい。同様に幅広のショートパンツをセットアップで合わせて、新時代のドレスアップに挑戦しよう。

2015年にファーストコレクションをリリース。海外の名高いセレクトショップでも瞬く間に人気を得た、日本発のフットウエアブランドがフラワーマウンテンだ。ブランド名はデザイナーが通った山のニックネームに由来し、自然界から切り出したモチーフとライフスタイルを反映させた靴づくりを信条とする。今回取り上げた「ライキリ」は、アイヌ民族の履物であるストゥケレをヒントにした、グラフィカルなデザインが特徴。シューレース使いが快適なホールド感をもたらし、履き心地も抜群。アッパーは太陽や山など自然の造形からインスピレーションを得たオリジナル柄で、有機的なフォルムをもつソールのデザインも出色。唯一無二の存在感を感じさせるスニーカーだ。

相変わらずスニーカーは人気だ。定番のモデルを履きたいと思う一方、ブランド被りしない目新しいモデルを手に入れたいと思うのが靴好き、ファッション好きの人情というもの。サヴソルがブランドをスタートさせたのは2014年。ブランド名は、「Shoes、Utility、Value、Sole」の頭文字などを含んだ造語で、デザインと実用的機能の融合をコンセプトにした、いま話題のブランドだ。新作のトレイルシューズはイタリアのビブラム社に依頼したオリジナルのソールに、80 年代のアウトドアスニーカーを思い起こさせるデザインの組み合わせが秀逸。ボリューミーなシルエットと登山靴を連想させる赤いシューレースが、足元に華やかなアウトドアテイストを演出してくれる。

京都に店舗とアトリエを構え、和の美学とモードを混ぜたスタイルを展開するファッションブランド、レインメーカー。同郷の優れた工芸品ともコラボする彼らが今回手を結んだのが、平安時代に起源をもち京金網で日用品を生み出す金網細工工房、金網つじ。両者のセンスと技術が融合して、これまでにないバングルが誕生した。金網つじが茶こしや豆腐すくいなどに用いている取っ手を、アクセサリーに応用したものだ。3本の銀線を横に並べた本体はシルバー925で、巻きは真鍮。職人の手仕事による精緻な巻きは、見事な出来栄えである。迫力よりも繊細さを前面に出し、華奢な日本人の手首を美しく映えさせる。さりげなく身に着け、普段のスタイルを品よくアップデートさせよう。

レトロな形のキャンバススニーカーは、アッパーが深い濃紺の市松模様だ。この色は天然の藍で染められたもの。日本最高峰のカジュアルシューズブランド、ムーンスターが手がけた2020年のリミテッドモデルである。一部の製品に「Made in Kurume」と印字するほど自社工場を構える福岡県久留米市に誇りをもつブランドが、江戸時代後期に生まれた伝統的な織物である久留米絣に目をつけた。藍染めした糸で織ったこの生地を、1960年代のトレーニングシューズをベースとしたスニーカーに落とし込んだ。すべてが久留米製の工芸的な一足に仕上がっている。足元と色を揃えてパンツをデニムに、トップスを白シャツにするのが、派手さを抑えた大人の履き方のセオリーだ。