【実力派ショップを巡る、東京古着案内】Vol.6 ウェブ限定の名店と、人気ショップが選ぶ名著4選。
東京古着の最前線といえる、群雄ひしめく実力派の古着屋を全6回に分けてご紹介。最終回はオンライン上だけに存在する話題のショップを3軒ピックアップした。さらに、本も取り扱う古着屋4軒がそれぞれ選んだ、店のコンセプトにも通ずるという珠玉の一冊を紹介しよう。
1.オアノット ──年代物の欧州古着と、デッドストックに注力。
2.ポスト ジャンク ──ブラウザから直感で探す、自分だけの一着。
東京古着の最前線といえる、群雄ひしめく実力派の古着屋を全6回に分けてご紹介。最終回はオンライン上だけに存在する話題のショップを3軒ピックアップした。さらに、本も取り扱う古着屋4軒がそれぞれ選んだ、店のコンセプトにも通ずるという珠玉の一冊を紹介しよう。
1.オアノット ──年代物の欧州古着と、デッドストックに注力。
2.ポスト ジャンク ──ブラウザから直感で探す、自分だけの一着。
「オアノット」は、デザイナーの作品を消費するのではなく循環させることで、ファッション業界をサステイナブルな構造へと変化させることを目的にするプラットフォームだ。提携を結んだ国内のショップの商品をウェブサイト上で全世界に向けて販売。その数はウイメンズアイテムを含め約550ブランド、計10万点にものぼる。デザイナーズ・アーカイブだけに特化してこれだけの点数を取り扱っているのは、世界広しといえどオアノットだけだろう。真贋問題と常に隣り合わせであるデザイナーズ・アーカイブの特性上、厳しい審査を通過したショップのみと提携しており、偽物をつかまされる心配もないのでご安心を。
【関連記事】「東京古着日和」の音声メディアがスタート
オアノット
「ポストジャンク」というショップ名が指す通り、ここで提案しているのは、ガラクタとなって時間が経過した後でもなお伝わる魅力や核をもつアイテム。年代やブランドよりもルーツやバックボーンに重きを置くオーナーが考える、いい古着の条件は次の3つだ。現代のファッショントレンドや空気感に即していること。時代が変わろうとも光り続ける、確固たる核があること。奇をてらわないユニークさをもちつつ、あくまでも着たいと思わせるカッコよさがあること。価値の判断基準が明確になっている古着市場において、その視点はまるで個性派セレクトショップのよう。自分だけの一着が欲しいという本気の古着好きにとっては、もってこいのショップなのだ。
【関連記事】東京古着日和のYouTubeアカウントを開設
ウェブオンリーの販売手段を選んだ理由をオーナーは、「オンラインであれば、普段の買い物では見逃してしまう、知識がないと気づかないディテールや特徴を余すことなく提供できるから」と語る。いまでは入手困難なデッドストックから廃棄寸前のダメージものまでが揃っている。サイト上に並ぶ、ていねいに撮影されたディテールカットを見れば、そのアイテムのコンディションが正確にわかる。そこから飛ぶブログを読めば、どういうシチュエーションで見つかったか、誰が所有していたか。またなぜこんなダメージがあるのかといった背景を知ることができ、より愛着が増す。「届いたら想像と違った」なんてネット通販特有の懸念は、「サムシングハプンス」に対しては必要なし。
【関連記事】光石研の東京古着日和ついに最終話!
サムシングハプンス
【ラボラトリー/ベルベルジンアール(原宿)が選んだ一冊】
NYの廃墟に住みついた、パンクスたちの8年間。
アッシュ・セイヤーが、90年代のローワー・イースト・サイドの廃墟で生活していたスコッター(不法占拠者)たちを撮影。パンクスやアナーキストから成るスコッターが醸す退廃的なムードとファッションは、元ロックミュージシャンが廃墟で始めたショップという同店の架空の設定とリンクする。
ラボラトリー/ベルベルジンアール
東京都渋谷区神宮前3-21-22 いとうビル1F
TEL:03-5414-3190
営業時間:11時~20時
無休
http://store.paris-tx.com
【フィフス ジェネラルストア(中目黒)が選んだ一冊】
1930年代のハーレムを、当時の姿のまま表現。
10年以上前にロサンゼルスで古着の仲卸をしていたオーナーが、ガレージセールやフリマを掘る中で出合った一冊。ヘレン・レヴィットが素直に切り取った1930~40年代のハーレムのローカルな街並みとそこに住む人々の姿を、いまは見ることのできない当時の雰囲気のまま、彼に教えてくれたという。
フィフス ジェネラルストア
東京都目黒区上目黒2丁目13-3 井内ビル裏 1F
TEL:03-6303-0465
営業時間:14時~21時
不定休
http://fifth-general-store.jp
【オフショア トウキョウ(原宿)が選んだ一冊】
スプラウスの才能を、一冊に集約。
80年代を席巻した鬼才スティーブン・スプラウスのアートワーク集。当時のレジェンド・ミュージシャンが彼のことを愛したように、「オフショア トウキョウ」がセレクトしたルイ・ヴィトンとスプラウスのコラボアイテムはヴィンテージのバンドTとの相性もよく、ショップの世界観ともマッチ。
オフショア トウキョウ
東京都渋谷区神宮前3-14-17 1F A/B
TEL:03-3470-6877
営業時間:11時~20時
無休
www.offshore-tokyo.com
【ジ アパートメント(吉祥寺)が選んだ一冊】
創設メンバーが綴る、ローライフの軌跡。
著者であるラック・ローは、全身をラルフ ローレンで着飾るスタイルで後のファッションとカルチャーに影響を与えたローライフの創設メンバー。そのムーブメントを納めた一冊は、彼らに出会ってラルフ ローレンの真の魅力を知った「ジ アパートメント」にとって、切っても切れないものなのだ。
ジ アパートメント
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-28-3 ジャルダン吉祥寺 106
TEL:0422-27-5519
営業時間:12時~20時
不定休
www.the-apartment.net
●掲載した商品はいずれも古着のため、完売している場合がございます。
●新型コロナウイルス感染防止など諸事情により、ショップの営業日時、内容、サービスの変更が急遽行われる場合がございます。その都度確認してください。
ロイヤル コペンハーゲンはデンマークの王立製陶所として1775年に創業した。以来、現在までこの国の王室御用達のテーブルウェアブランドであり、北欧のものづくりの代名詞であり続けている。熟練の手仕事による高度なクオリティと、長い歴史に裏づけられた気高さは、時代に左右されない価値をもつものだ。
ただしロイヤル コペンハーゲンは、常に新しいデザインに取り組むブランドでもある。その伝統の延長線上に名作と呼ぶべきものをいくつも生み出してきた。なかでも近年、最もエポックメイキングなシリーズは「HAV」(ハウ)に違いない。建築事務所「BIG」を率いるデンマークの著名建築家、ビャルケ・インゲルスらによるデザインチーム「KiBiSi」(キビシ)を起用し、ハウが発表されたのは約2年前。それはブルーの花柄で彩られたロイヤル コペンハーゲンのイメージを一新する、きわめて大胆なものだった。
KiBiSi(キビシ)
デンマーク生まれの3人が2009年にスタートしたデザイン・ユニット。家具、日用品、電気製品など、各々の持ち味を活かした幅広いデザインを手がける。
キビシの3人がハウをつくる過程でインスピレーションを得たものに、デンマーク北西部のコールド・ハワイと呼ばれるコミュニティがある。北欧有数のサーフスポットだが、その名の通り温暖な場所ではない。都会に住む人も、ここでは波とひとつになり、ありのままの自分に還っていく。海で冷えた身体を温めてくれるのは、仲間たちと囲む食事だ。シンプルゆえに本質的なライフスタイルは、現代における真のラグジュアリーと言えるのではないだろうか。ハウは、そんなシーンにふさわしいテーブルウェアとして発想された。
一連の器に用いられたグレイッシュなブルーは、まさに北欧の海の色そのものだ。職人が2種類の釉薬を吹き付け、焼成の過程で釉薬が混じり合い、独特の色彩をつくり出していく。波打つ海面にも、魚の鱗のようにも見えるレリーフは、1892年に発表された歴史的コレクション「シーガル」のパターンを参照した。
今年、ハウに新しく加わったジャグに象徴される、自然の造形を思わせるフォルムも印象深い。このジャグは、以前からラインアップされていたカラフェを小ぶりにしたような形をしている。カラフェは、海面から飛び立つ白鳥の胸をイメージして、首元から徐々に色が薄くなるグラデーションを施していた。新作のジャグはそれとは逆に、底から上に向かってのグラデーションが美しい。ダークブルーの水面に降り立つ白鳥を連想せずにはいられない。
またプレートには、いままでよりもひと回り小さく、使い勝手に優れた直径17㎝のタイプが加わった。既存のプレートと重ねると、まるで波紋のようなパターンが生まれる。ジャグやカラフェと組み合わせることで、テーブルの上に静かなストーリーが展開していく。
これまでのロイヤル コペンハーゲンの世界観を一新する、ハウがつくり出す澄みきった風景。ただしブランドに受け継がれるクオリティと気高さに、妥協はない。これは豊かな伝統から生まれた現代の器なのだ。
今秋、発表されるロイヤル コペンハーゲンの新作を手がけるのはガムフラテージ。そのモチーフと、発想のルーツをたどる。
伝統的なパターンに、新しい生命を吹き込む
ガムフラテージは、いま人気が急上昇しているコペンハーゲンのデザイン・デュオだ。それぞれの出身国であるデンマークとイタリアの感性を融合させ、さらにオリジナリティを確立した作風がジャンルを超えて評価されている。たとえば2019年発表の「ブルーミスト」は、彼らが手がけたパリの北欧レストランのためのテーブルウェアで、ブルーと白い素地のコントラストが鮮やかだ。
ふたりは21年秋の発表に向けて、ロイヤル コペンハーゲンと新しいプロジェクトを進めている。「ロイヤル クリーチャー」と名付けられるこのシリーズは、海中、水辺、その周辺という3つの場所に棲む生き物がモチーフ。クラシックな印象の「プリンセス」シリーズをベースに、その表面を魚、虫、水棲生物などの姿で彩る。この絵柄は、ロイヤル コペンハーゲンが創業時から用いてきたブルーフルーテッドのパターンを分解し、再構成して描かれるという。ブルーフルーテッドはこのブランドのデコレーション番号「No.1」であり、200年以上の歴史を象徴する絵柄だ。
簡潔で洗練されたイメージのあるガムフラテージだが、ふたりは遊び心を大切にするデザイナーでもある。ロイヤル クリーチャーは、意外性あふれる着想に基づき、伝統的な絵柄から新しい魅力を引き出す試みだ。ハウに引けを取らない斬新さをもつ一方で、ロイヤル コペンハーゲンのベーシックな器とも見事な調和を見せる。
ブランドの新たな歴史を刻む、次なるプロジェクトの全貌が明らかになるのを楽しみに待ちたい。