レトロな形のキャンバススニーカーは、アッパーが深い濃紺の市松模様だ。この色は天然の藍で染められたもの。日本最高峰のカジュアルシューズブランド、ムーンスターが手がけた2020年のリミテッドモデルである。一部の製品に「Made in Kurume」と印字するほど自社工場を構える福岡県久留米市に誇りをもつブランドが、江戸時代後期に生まれた伝統的な織物である久留米絣に目をつけた。藍染めした糸で織ったこの生地を、1960年代のトレーニングシューズをベースとしたスニーカーに落とし込んだ。すべてが久留米製の工芸的な一足に仕上がっている。足元と色を揃えてパンツをデニムに、トップスを白シャツにするのが、派手さを抑えた大人の履き方のセオリーだ。

1965年創業、良質なランドセルでも知られる土屋鞄製造所が新たに発表したのが、造形美を感じる「ナミ」シリーズ。同シリーズに使われているのは、“スムースフレックスレザー”と呼ばれる素材だ。クロムなめしした後に、革の繊維を軽くほぐし、アイロンでスムース仕上げを施しながら艶やかさを付加。そのためしなやかさと張りを併せもつように仕上げられている。このバックパックはアシンメトリックなフラップが特徴で、メインの収納はA4クリアファイルが入る大きさ。フロントには同シリーズの特色であるスマホなどが収まるマグネット式のタックポケットが装備されている。洗練されたデザインと機能性が融合した、老舗の新たなるレザーバックパックが誕生した。

デンマーク生まれのエコー。日本では靴で名を馳せるブランドだが、グループ企業に革新的なレザーを製造する会社をもち、自社でレザーアイテムを製造するだけでなく、世界有数のブランドにもプレミアムなレザーを提供している。すべてのレザーが環境に配慮して製造され、世界中できわめて高い評価を受ける。今回取り上げたバックパックに使われているのは、まるで大理石のような光沢を備え、経年変化の美しさが楽しめるヴェスパーレザーだ。デザインを担当したのは、あのヴァージル・アブローとの共同プロジェクトから生まれたスニーカーで話題を集めた、世界的デザイン集団「スタジオヘーゲル」。レザーと思えない膨らみとやわらかさが表現された見事なプロダクトに、思わず脱帽。

男女の服装の違いをなくす「クロスジェンダー」の考え方が、先端モードとしてビッグトレンドになったのは2013年前後のこと。その流れは広く一般化して現在まで続いている。都心では主に若年層で、中性的な服を着る男性の姿が目につくようになった。こうしたジェンダーレス・スタイルの着こなしにひと役買うのが、近年人気が高まるロングシャツだ。コートのように羽織れば、これ一枚で見栄えがする便利なアイテムである。ここに紹介するのは、チュニックタイプですっぽりと頭から被るヘンリーネックの一着。サイドポケット付きで機能面も工夫されている。ピンストライプ生地の素材は、麻とコットンの混合。女性が着るとワンピースに見え、男性だと民族的な雰囲気になる多彩な表情も魅力だ。

モードブランドのジル サンダーが再び注目を集め出したのは、2017年にクリエイティブ・ディレクターが交代してからだ。持ち前の品格やミニマリズムが蘇り、さらにモダンアートや彫刻のような美も加わって大幅にアップデートされた。その新生ジル サンダーのアイコンバッグシリーズが、上写真の「タングル」である。四角い小型の収納部を吊り下げるのは、有刺鉄線のように編み込まれた革紐のショルダーストラップ。まず女性に評判になったタングルはジェンダーレスなデザインであり、男性にも好評を博した。ここに掲載しているのは新たに展開されている、ストラップが約10㎝長くなったメンズモデル。これなら背の高い男性でも、肩がけや斜めがけも思いのままだ。