ドレスクロージングの分野ではここ数シーズン、英国調がブームですが、サイがつくったスプリングコートはこの流れを象徴するもの。スコットランドのインバーネス近郊の地名、バルマカーンに由来するこのコート、シングルブレスト、ラングランスリーブの伝統的なデザインをベースにしていますが、素材はキッドモヘア混のファインウールとメリノウールで織り上げた茶系の細かいガンクラブ柄の生地。モヘアの特徴である張りと光沢をもち、軽量で清涼感ある生地が着用時に軽やかさと上品さを演出します。シルエットはミリタリーベースのコートをベースに考えているので、ゆったりとしたカッティングが特徴となっています。長めの着丈が英国調のコートに新しい表情を与えることに成功した、好例と言える一着です。

1970～90年代にはポピュラーだったものの、いつしか人気が下火になったウエストバッグが、完全復活しています。流行に敏感な世界のセレブたちが身に着け、一気にブームが広がったのがその理由です。現代的な使いこなしのコツは、肩に斜めに掛け、着るように身に着けること。ここに紹介するのは、そんな服装のアクセントにぴったりな、横幅約20㎝の小ぶりなモデルです。肌のようなスキンカラーで、過去の時代のウエストバッグにはないモダンな表情があります。さらに、素材のユニークさにもぜひ着目を！ふわりと柔らかな、ごく珍しい鹿のヌメ革なのです。しだいに日焼けして、濃い茶色に移り変わっていく特性があります。このバッグはいわば、まだ未完成品。真に完成するのは、長く愛用して、自分色に育て上げた時なのです。

あたかもネックレスのように首から下げる、ミニケースの人気が広がっています。“実用性のある軽快なアクセサリー”という位置づけで、幅広い世代に新しいアイテムとして支持されています。ただしミニケースは、選び方や取り入れ方が意外と難しいもの。ラグジュアリーな高級品は似合う服が限られますし、スポーツ系だと典型的な休日の装いになりがちです。そこでお薦めするのが、両者のいいとこ取りをしたこの一品。革の本体はエレガントな印象で、ストラップはスポーティな味わい。両者を組み合わせて絶妙にドレスダウンさせた、ヌケ感のあるデザインが秀逸です。こだわりの革は、フランスの某一流メゾン御用達として名高い、名門タンナーのデュプイ社製。ケース自体のつくりも精緻で、大人にふさわしい品格があります。このミニケースを普段の服装に加えれば、旬の着こなしを簡単に楽しめること請け合いです！

今年3月からバーバリーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任したリカルド・ティッシ。その彼がバーバリーのクラシックや英国のヘリテージをたたえてキュレーションした2019SSのプレコレクションから誕生したのがロゴを配したスカーフです。英国らしいフットボールスカーフをイメージにしたもので、オレンジをベースにバーバリーのロゴをジャカード織で大胆に表現。素材がなめらかなカシミアで、ラグジュアリーなテイストが伝わってきます。英国などの欧州ではフットボールを観戦するときに、チームカラーやロゴが入ったスカーフを身に着け、ときにはスカーフを振り回してチームを鼓舞することがあります。そんなスポーツシーンを想起させる、好デザインなのです。

この秋冬は、華やかなファッションが熱かった1980～90年代をサンプリングしたアイテムが話題を呼んでいます。ブランドロゴを大胆に使ったデザインもその傾向を表すもの。服全体に大きくロゴを配したアイテムも目立ちますが、ロゴ付きのスカーフなどでこの流行をさりげなく表現するのもよいでしょう。これは春夏に先駆けて発表されたカプセルコレクションの「フェンディ マニア」から登場したメンズ用のスカーフです。表側にはインスタグラムアーティストであるヘイ・レイリーがデザインした「FENDI/FILA」ロゴが描かれ、裏側にはフェンディ伝統の「FF」ロゴが採用されています。スポーティさとメゾンらしいシックさが、スカーフの両面で表現しているところが見事です。