地球環境への意識が高まるいま、ファッションにとっても環境への配慮は重要な課題だ。服のリメイクを得意とするブランド、セブン バイ セブンが今季発表したセーターはそんなエコな時代を象徴するアイテムといえる。古着として集められたデニムシャツを一度細い短冊状に裁断した後、ていねいにハンドで編み込んだモデル。全体の色みはインディゴで統一されているが、資材にした古着のデニムシャツに個体差があるので、グラデーションのようなカラーリングに見える。裁断から編み込み、形成まですべてのプロセスは手作業によるもので、完全一点モノ。まるでアートピースのような出来栄えだ。廃棄物に新たな付加価値を生み出す“アップサイクル”と断言できる逸品といえる。

2007 年のスタート以来、移り変わる時代の変化を素早く読んでデザインに反映させ、女性の心をつかみ続けるビ ューティフルピープル。ヒットアイテムであるブランドロゴ入りのトートは、いまや街の定番だ。デザイナーを務める熊切秀典は、ベーシックをモダンに生まれ変わらせるセンスに長けている。ジェンダーレス時代のいま、同ブランドが力を入れているのが男女の区別のない自由なウエアだ。このシャツ風ブルゾンもそのひとつで、レーヨンドビー生地の表裏に花柄がプリントされ、リバーシブルで着用できるよう工夫されている。一見すると派手なようだが、カタチもディテールもシンプルなため意外なほど着やすい服だといえる。シャープなパンツでモードに、デニムでクラシックに装うのもいいだろう。男性はジャストサイズを選び、女性はオーバーサイズにすると同じ服でも印象が変わる。いまという時代の感性に満ちた一着なのだ。

世界に知られるレディスのファッションブランド、トーガのメンズ版であるトーガ ビリリースには、デザイナー古田泰子の個性が色濃くコレクションに投影されている。古田が好むのは、ウエスタン、古着、昭和の不良の男たち。ここに紹介する胸まわりを大輪のバラが大胆に飾る耽美的なシャツにも、その要素が込められている。バラはウエスタンシャツのポピュラーなモチーフだが、テロッとした生地はまるで古着のアロハシャツのようだ。レトロモダンなこの服は、ラフな着こなしがよく似合う。ボタンを開けてジャケット代わりに羽織ったり、室内でパジャマのように着るのもいい。気分も新たにしたい2021年がスタートしたいまこそ、開放的なデザインのウエアに袖を通し、新鮮なスタイルに挑戦してはいかがだろうか。

1866年創業、ロンドンのビスポーク靴店にルーツをもつジョンロブ。同ブランドの不朽の名作「ウィリアム」が今年75周年を迎えたが、もともとは英国のウィンザー公から注文を受けて1945年に製作されたモデル。ダブルバックルの意匠は飛行士の靴（アビエーターブーツ）からインスピレーションを得ている。いくつかの記念モデルが発売中だが、「ウィリアム92」は、1992年に登場したモデルに由来し、アッパーに凹凸がある「カントリーカーフ」を採用。ナチュラルカラーのステッチがモダンさを奏でる。「ライトウェイトウォーキングソール」と呼ばれるゴム製EVAソールが使われ、履き心地まで考えられている。完成されたデザインは不変だと再認識させられるモデルだ。

スニーカーの勢いが続く中、あえて革靴を選ぶというのもファッションの楽しみ方のひとつだ。今回紹介するのはトッズの新作「クリント」というローファー。甲部のサドルの端を糸で縛り上げた「ビーフロール」のデザインに、レトロさを感じる人も多いだろう。今シーズンから同ブランドのクリエイティブ・ディレクターを務めるヴァルター・キアッポーニは、ブランドの原点に立ち戻り、プラグマティズム（実用主義）に反骨精神を融合させたコレクションを発表したが、このローファーもその代表作といえる。ローデングリーンのアッパーにブラウンのコバという異色の配色に、チャンキーなラバーソール。ハンドステッチを際立たせたデザインがレトロな顔つきを新鮮に見せている。