昨今のファッションのキーワードとしてよく耳にするのが、「コントラスト」という言葉。平たく言うと、“メリハリ” のことです。マットな服と光沢の服を組み合わせたり、新品とヴィンテージをミックスした着こなしを意味します。この言葉を頭に置き、全身をワントーンで揃えがちな冬の定番スタイルを、ひと工夫アレンジしてみては？　色鮮やかなアイテムを一点投入すれば、手軽にコントラストを表現できます。上写真のセーターは、そんな着こなしに便利な一着。丸ヨークのジャカード模様が、スコットランド発祥のフェアアイルセーターを彷彿させます。民族調が流行しているいまの感性に合致しつつ、長年着続けても古臭くならないニットです。クラフトマンシップを感じさせるこうした服を、様々なテイストの服と自由に混ぜて着るのがイマドキです。

　スーツを買うときに「ドロップ」という言葉を耳にしたことはありますか。これは胸囲と胴回りの差寸のことで、数字が大きいほど、細身であることを意味します。この春夏、イタリアの名ブランド「カルーゾ」が発表したのが「ドロップゼロ」、つまり差寸がまったくないジャケットです。オーバーサイズや緩めの価値観が一般的になった現在、日本のユナイテッドアローズが大人の男性に向けて高いクオリティでその傾向を表現したいと発注し、実現したものです。モダンなシルエットと雰囲気は、クラシックにとどまらない「カルーゾ」だから表現できたとも言えます。今季は「ドロップゼロ」が、コートにまで発展。ボリュームのあるシルエットが、モードともクラシックとも違うテイストを醸し出しています。

近年、「ヘルノ」はモダンなデザインのダウンウエアで有名ですが、もともとはメンズのレインコートでスタートしたブランドです。取り外し可能な「チェストプロテクター」が付いたチェスターフィールドコートは同ブランドの人気モデルで、多くのイタリア紳士が愛用しているアイテム。通常はナイロン素材のプロテクターをバーニーズ ニューヨークではコートの表地のメルトンウールに近い素材に変更し、ビジネススタイルに対応できるように仕上げました。美しいシルエット、膝丈まで計算された着丈は絶妙です。ライニングの中綿には保温性に優れた「ヘルノテック」を使用する気配り。プロテクターが取り外せるので、スーツからカジュアルまで着用でき、冬向けのコートとしては万能です。

ゼロ年代が始まってからの10年間を、小さめの服を着る「タイトフィット」の時代とするならば、現在は真逆の、ゆったりと着る「オーバーサイズ」の時代といえるでしょう。ラグジュアリーさを感じるリラックスした服に袖を通して、旬の雰囲気を纏ってはいかが？ 今季注目されるアイテムは、ボリュームのあるシープスキンの服。レザーのスペシャリストであるイタリアの「フェンディ」からも、ラム（子羊）スキンをたっぷりと使った特別なグレーのパーカが登場しました。本来は裏面に用いるボアを、大胆に表面に配したラグジュアリーな一着です。背中には “フェンディ スタンプ” ロゴがつき、ブランドのアピールにも抜かりはありません。旬のスタイルであるストリートな感性をフェンディで手に入れ、贅沢に浸りましょう！

モード界で2018年のA/Wシーズンでは、ヴィンテージ感がキーワードになっています。上写真のジャケットは、表側が起毛され裏側がボアになったシープスキン製。スペインのラグジュアリーメゾン「ロエベ」の新作です。1970年代に流行したシアリングコート（ランチコート）を想起させる、レトロなムードに味わい深さがあります。この服は異なる要素をミックスする、現代的なハイブリッドデザインでもあります。ベースの型がカジュアルなジージャン（デニムジャケット）で、そのデニム素材が極上のシープスキンに置き換えられているのです。ジージャン本来の縫い目に着目し、そこから白ボアを飛び出させた、立体的でグラフィカルな表現にもさららる工夫が。高級品と臆せずに、ラフな服装と合わせて着てこそ様になる一着といえるでしょう。