ウディ・アレンが映画『アニー・ホール』で着こなした、トラッドな愛用品。
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一第2回 ツイードのジャケットにいつも合わせていたチノパン
1977年制作の映画『アニー・ホール』。NYを舞台に男女の恋と別れを綴ったラブストーリーで、映画の出来も素晴らしいのですが、主演したウディ・アレンとダイアン・キートンの着こなしは、いまでもとても参考になります。ウディ・アレンは、いつもツイードジャケットに小柄のチェックシャツ、パンツはプリーツが入ったチノパンを合わせ、黒のセルフレームと相まって、ナードな雰囲気を醸し出しています。ダイアン・キートンの着こなしもセンス抜群です。太めのチノパンにベストを合わせたマニッシュなスタイルで、世界のファッショニスタを魅了しました。リアリティある彼らの着こなしは、映画の中でも、重要な役割を果たしています。今月紹介するのは、まさに1970年代から80年代にかけてのスタイルのお手本ともいえる、ウディ・アレンの愛用した品々です。第2回はツイードのジャケットにいつも合わせていたチノパンをご紹介します。
映画『アニー・ホール』で、ウディ・アレンがツイードジャケットにいつも合わせていたのが、カーキのチノパンです。
そもそもチノパンとは19世紀半ば、インドに駐留した英軍が敵の目を欺くために染めたカーキ色のパンツにルーツをもち、その後米軍にも採用され、戦後、世界中に流通しました。今でもチノパンはメンズファッションのワードローブに欠かせないアイテムですが、映画が制作された1970年代のチノパンは、フロントにプリーツが入ったものが主流でした。しかもハイウエストで、シルエットも現代主流を占めるテーパード=先細りとは違い、ゆったりとしたストレートシルエットなので、小振りなウディ・アレンが穿くと、ワイドシルエットにも見えます。しかもウディ・アレンはセンタークリースを入れずにラフに穿いています。
今回紹介するのは、チノパンという言葉がまだ定着していない1970年代の日本で、本格的なチノパンをつくった「バーンストーマー」の製品です。マッカーサー将軍をはじめ米軍上級士官たちが愛用していたパンツをデザインソースにしているので、モデル名も「マッカーサー」。素材は通常のチノクロスよりも強度が強く、光沢があるウエストポイントを採用しています。内側に向いたフロントのプリー、右側に配置したウォッチポケット、ウディ・アレンが穿いていたチノパンと同じディテールではありませんか。
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