2017年1月、テレビ東京の深夜ドラマとしてスタートした『バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜』は、深夜枠ながら業界内視聴率30%とも噂されるほど、開始直後から大きな反響を呼んだ。その翌年にスタートした第2シリーズ『バイプレイヤーズ〜もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら〜』では、撮影期間中にバイプレイヤーズのリーダー的存在であった大杉 漣が、体調を崩して急逝してしまうという悲しい出来事に直面したが、それから3年を経た今年の1月、ついに続編となる第3シリーズ『バイプレイヤーズ〜名脇役の森の100日間〜』がスタート。さらに4月には、映画『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら〜』の公開も予定されており、その勢いは収まる気配を見せない。
本特集では、「もしもバイプレイヤーズが、ファッションモデルだったら?」というテーマのもと、田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一の4人とともに最新のファッションを紹介したが、彼らが顔を合わせた途端に始まるのが、エンドレスに繰り広げられる無邪気な雑談や小芝居。ここではインタビューを通して自由気ままに交わされた4人の会話を、臨場感豊かにありのまま公開する。
───シリーズ開始当初は非常にミニマルなスケール感だったバイプレイヤーズも、回を追うごとに、どんどんスケールアップしている印象です。反響は実感されていますか?
光石 いまは状況的にあまり人に会わないからわからないですが、第1と第2シーズンの時は、いろんな人に「見てるよ」って言われましたね。
遠藤 特に第1の時ね。
田口 みんな実名で、素に近い芝居をさせるっていう発想が大胆ですからね。
全員が細部までこだわり、実現したリアリティ
───その実名で出演するという設定に対して、違和感は感じましたか?
田口 実名とはいえ、やっぱり台本はあるわけで、最初はみんな、「俺、こんなこと言わないよなぁ」っていうタイプの違和感は抱えていました。だから撮影の初日が終わってみんなで飲みに行った時に、「ちゃんと言ったほうがいいよね」ってことになって、すぐにプロデューサーの浅野さんをその場に呼び出して、骨格の部分を軌道修正してもらうようにしました。
光石 そう。本当にああいう人間なんだって思われちゃったりするからね。すぐ女優さんに手を出すとか。
遠藤 そこはまんまじゃん(笑)。
光石 そんなわけないでしょ!
遠藤 手は出さなくてもさ、ほら、俺たち女優さん好きじゃん。
光石 俺たち(笑)。そういえば、嫌いじゃないかもね……(笑)。
田口 なによ、それ(失笑)。
松重 でも実際に、そうやってみんなで一緒に作り上げていく過程が楽しかったですよね。みんなのぶっちゃけトークみたいなのも入れてもらったし。
田口 本編の後の「バイプレトーク」ね。あれは「僕らが飲み屋で話している内容をそのまま使ったら、いちばん本音で面白いんじゃない?」って提案したら、そのまま通った感じでした。
松重 トモロヲさんの下ネタはバッサリ、カットされてましたけど。
一同 (笑)
田口 でも本当にことあるごとに浅野さんを呼び出して調整してもらったよね。彼が真性のドMだったからよかった(笑)。一応「またかよ」みたいな困った顔をしながら、でもちょっとうれしそうな感じで。「俺らこんなに踊ったりしないでしょ」とかさ。
遠藤 それ、最終的にはしっかり踊ってたじゃんね(笑)。
松重 完全に浅野さんの根気勝ちですよ。本当だったらみんなの藁人形を作って打ち付けてもいいぐらいのことはしましたから、僕らは。でもそれは他の現場ではなかなかないことだし、だからよりドキュメンタリーっぽく撮れたっていうのはあると思います。
───シェアハウスで共同生活をするのが20代の若者ではなく、50〜60代のオジサンという部分も、人気を支えている大きな理由だと思います。自分が若い頃に想像していたオジサン像と、いまの自分。なにか違いはありますか?
松重 オジサンっていうか、みんな60絡みになってくると、もうオジイサンなんですよ。でもオジイサンになりきれていないから、どうしても笠智衆さんみたいな芝居はできないんです。
光石 昔の俳優さんって、この年代になったら、もっと落ち着いていたイメージありますよね。
田口 もっと落ち着いているか、もしくは死んでいるかでしょ。僕らの憧れていたような名バイプレたちは、結構早死にしていますからね。
一同 (失笑)
松重 最近は長生きする人たちが増えて、60代でもまだオジサンの範疇でいられるんですよね。全体的に、精神年齢が幼児化しているというか。
───男らしさが際立った昭和の俳優像と比べると、いまは性別も曖昧になっているような気がします。
田口 年取るとね、だんだんおばちゃんになっちゃうんですよ。
光石 それこそ大杉さんなんて、完全におばさんでしたもんね(笑)。
松重 そう。おばさんのリーダー。
シリーズの礎を築いた、絶対的リーダーの功績。
───今回みなさんで最新のファッションを体験してみて、いかがでしたか? 楽しめましたか?
遠藤 俺、びっくりしたのが、スタジオのなかを移動するためのサンダルだと思っていたら、「これで撮影します」って言うんだよ。だから全然スイッチ入らなくってさ(笑)。他にもあれいや、これいやっていろいろ言っちゃって、スタイリストさん困らせちゃったんじゃないかな(笑)。完全に時代遅れのおじさんだよね。光石さんはいちばん挑戦していたじゃん。黄色いコートで。
松重 あれ、自分でオーダーしたんでしょ? 編集部に直接、電話して。
光石 違いますよ! 「みんなより目立ちたいから、自分だけ黄色にして」なんて、言うわけないでしょ(笑)。でもなんか、僕は人からこういうのを着たら面白いよって言ってもらうのは、わりと楽しめるタイプなんですよね。
───常になにかしら役を演じている俳優さんだからこそ、素の表情を覗き見している感じが面白いんですよね。普段も本当にあんな雰囲気なんですか?
遠藤 そうだね。俺はよく人に絡んで幼稚なことをやっているから、付き合って遊んでもらっている感じかな。くだらない小芝居を始めたり。
松重 あの小芝居って、若い俳優さんとか、俳優を目指している人にとっては、すごく勉強になると思いますよ。なんか適当に役割を決めて、ゲラゲラ笑いながらやるんだけど、実は笑いにもっていくまでには、相当な技術が必要だったりして。実際に本編で採用されたやり取りも多かったし。
田口 あそこに俳優修業のイロハが全部凝縮されていると言っても過言ではない。現場でもよく、自分たちだけで練習したよね。
遠藤 そう。現場に入ってから、せーの、でやることはなかったよね。だんだん練習するようになった。
松重 そういう雰囲気を作り上げたのは、リーダーの漣さんでしたよね。
一同 そうそう。
松重 漣さんがきちんと下地となるレールを敷いてくれたからこそ、映画になって100人の脇役が出てきても、ちゃんとそれぞれに見せ場のある、面白い作品にできたんだと思います。
田口 完全に漣さんの功績だよね。いちばん年上だったし、「練習しよ」「台詞やってみよ」ってみんなをまとめて、それぞれの良さを引き出してくれたのは漣さんだった。やっぱり最初のバイプレイヤーズっていうのは、どこまでも漣さんありきの存在ですよね。
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話の尽きないやり取りは、どこをどう切り取っても、あのドラマシリーズの雰囲気そのものだった。
『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら〜』
『バイプレイヤーズ』シリーズ待望の映画化作品が、今年1月から放送されている第3シリーズ『バイプレイヤーズ 〜名脇役の森の100日間〜』終了後の4月9日に公開予定。タイトル通り、テレビ東京史上最大規模となる、総勢100人もの個性派俳優が、すべて本人役で出演する。いつも通りお祭り騒ぎのドタバタ・コメディで畳み掛けると見せかけて、最後には涙を誘う感動的な展開も!?
監督/松居大悟 脚本/ふじきみつ彦、宮本武史
企画・プロデュース/浅野敦也
2021年4月9日よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開。