デイヴィッド・ホックニー流、シアサッカースーツの着こな...

デイヴィッド・ホックニー流、シアサッカースーツの着こなし方とは

文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一
イラスト:Naoki Shoji

デイヴィッド・ホックニー──。ポップアートの旗手として1960年代から活躍し、現在でもiPadを使いこなして作品を発表し続ける、まさに美術界の“生きるレジェンド”だ。作品と同じく、本人もお洒落なアーティストとして知られる。彼の着こなしや作品とのかかわり、愛用する“名品”との関係を解き明かす。

イタリアの老舗生地ブランド、カノニコ社の素材を使ったモデル。ウール100%で、ナチュラルストレッチ性があり、撥水性などの機能性も考えられている。トレンドを取り入れた「ミラノ」モデルで、細身のシルエットが特徴。シャツは同ブランド永遠の定番であるオックスフォード素材のボタンダウンで、ホックニーが愛用したモデル。スーツ¥108,900(税込)、シャツ¥20,900(税込)、タイ¥15,400(税込)/すべてブルックス ブラザーズ

2018年11月、ホックニーの作品がニューヨークのクリスティーズでオークションにかけられ、9031万2500ドル(約102億円)で落札されたというニュースが世界中を駆け巡った。存命の芸術家としては史上最高額で、落札された作品は『芸術家の肖像(二人の人物のいるプール)』。1972年にアクリル絵の具を使って描いたものだ。

彼の作品には『A Bigger Splash』(67年)というプールの波しぶきを描いた作品があるが、74年に製作されたホックニーに関する同名の映像作品がある。これは史上最高額で落札された『芸術家の肖像〜』を描くホックニーを追った、ドキュメンタリーとフィクションがミックスした実験的な作品。同年にカンヌ映画祭でもプレミア上映されたと聞く。

残念ながらDVDを入手することはできなかったが、予告映像は発見することができた。ニューヨークと思われる街中を、白のスーツを着たホックニーが颯爽と歩く様子が映し出されている。いつものようにブロンドのおかっぱ頭に丸眼鏡。彼のアイコンのひとつ、襟元のボウタイに複雑な編み込みのニットベスト姿がいかにもアーティスト風だ。

スーツを着用したホックニーの姿で有名なのが、シアサッカーの上下を着用したポートレート写真だろう。モノクロなので色はわからないが、ブルー×白、あるいはグレー×白といった色合いと見て間違いないだろう。

アメリカの老舗ブランド、ブルックス ブラザーズが創業200周年を記念して出版した書籍『200 YEARS OF AMERICAN STYLE』にその写真が掲載されている。見開きページで写真が大きく拡大されているが、実はホックニーは、ストライプの上下にあえてストライプのボタンダウンシャツを合わせている。柄×柄の達人的な着こなしではないか。合わせたニットタイもわざと端がほつれたままで、彼流にスーツを着崩していることが写真を大きくしてくれたことでわかった。

その書籍の解説によれば、彼がよく着ていたのは白いオックスフォード素材のシャツらしいが、シアサッカーのスーツは同ブランドを代表するアイテムでもある。現在でも常にコレクションにラインアップされ、夏の着こなしには欠かせないスーツとして多くの紳士に愛用されている。今季のモデルは、イタリアのカノニコ社のウール素材を使ったモデルで、シアサッカーの見た目をキープしたまま、ナチュラルストレッチを備えた上に撥水性とシワの回復力まである。伝統と革新を常に目指す老舗の姿勢は、いつも新しい創造=クリエイションに挑戦してきたホックニーの作品づくりに通じるものがあるだろう。

表面に凹凸があるのがシアサッカー生地の特徴で、夏のトラッドアイテムの代表的な素材。ブルックス ブラザーズは1920年代にアメリカのメーカーとしては初めてこの生地を扱った。

イタリアのカノニコ社(正式名称はヴィタル バルべリス カノニコ社)は、1936年にウールの産地であるイタリアのビエラで創業した生地メーカー。世界の一流ブランドに素材を提供する名門だ。

ホックニーが愛用したニットタイも、ブルックス ブラザーズの定番だ。シルク100%の素材で、イタリア製。大剣にアイコンであるゴールデンフリースの刺繍がある。タイ¥15,400(税込)/ブルックス ブラザーズ

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問い合わせ先/ブルックス ブラザーズ ジャパン TEL:0120-02-1818
http://www.brooksbrothers.co.jp

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