デイヴィッド・ホックニーが丸眼鏡をかけたのは、セルフプロデュースのためだった?
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一デイヴィッド・ホックニー──。ポップアートの旗手として1960年代から活躍し、現在でもiPadを使いこなして作品を発表し続ける、まさに美術界の“生きるレジェンド”だ。作品と同じく、本人もお洒落なアーティストとして知られる。彼の着こなしや作品とのかかわり、愛用する“名品”との関係を解き明かす。
デイヴィッド・ホックニーが生まれたのは1937年。代表作の多くはアメリカのロサンゼルスで描かれたものが多いが、生まれはイギリス中北部の都市、ブラッドフォードだ。『ホックニーが語るホックニー』(デイヴィッド・ホックニー著、Parco出版局)には、「11歳の時に僕は画家になる決心をしていた」とある。地元の美術学校に進むが、「19歳になるまでロンドンに行ったことがなく、したがって僕の見た“本格”絵画とはブラッドフォード、リーズ、マンチェスター、ヨークのものがすべてだった」とも書かれている。故郷から出た彼は、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートの絵画科で学んだ後、渡米し、1964年からはカルフォルニアを拠点に多くの作品を描いた。
ホックニー本人と言えば、ブロンドの髪に丸眼鏡を連想する人が多いと思うが、ブロンドの髪はもともとの地毛の色ではない。『ホックニーの世界』(マルコ・リヴィングストン著、洋販出版)には「1961年のニューヨーク滞在中、髪をブロンドに染めていたことなどは、人間としてまた芸術家として注目されたいという彼の欲求を示している」とある。1951年に描いた自画像は褐色の髪のままだが、タイトルは「人生が一度きりなら金髪の男として人生を送りたい」とした。その後、彼は豊かな色彩を使った作品で名声を勝ち取るが、まさに身をもってそれを体現していたのではなかろうか。
彼が身に着けた丸眼鏡もセルフプロデュースをサポートする重要なアイテムで、彼のトレードマークとなった。しかし彼のポートレイト写真を集めてみると、作品同様、眼鏡の色合いもさまざま。デザイン的には丸みを帯びた逆三角形の「ボストン型」をかけていることもあるが、「ラウンド型」、あるいは喜劇俳優のハロルド・ロイドがよくかけたことから「ロイド型」と呼ばれる円形タイプが圧倒的に多い。若い頃の写真では丸眼鏡でもリムが太いものを特に選んでいるから、丸眼鏡を使って人々に印象を植え付けようとしたのではないだろうか。
彼が愛用した丸眼鏡を彷彿させるのが、2020年にデビューしたサイド エフェクツ アイ プロダクツの製品だ。デザインを手がけたのはヴィンテージ眼鏡専門店コンベックスの宮川祐介氏。ヴィンテージ眼鏡のクラシックな要素とファッション的な観点を絶妙なバランスで融合したデザイン。鯖江の最高峰のファクトリーで製造され、素材も日本国内で生産された希少なセルロイド使用する。リムの太さと堂々とした佇まいが、ホックニー愛用の丸眼鏡を連想させるではないか。
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