『ゴッドファーザー PartⅢ』では、誰もが「ペイズリ...

『ゴッドファーザー PartⅢ』では、誰もが「ペイズリー柄」のアイテムを身につけていた?

文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一
イラスト:Naoki Shoji

フランシス・フォード・コッポラが監督した不朽の名作「ゴッドファーザー」3部作。昨年末、公開から30周年を迎えた『ゴッドファーザー PARTⅢ』を監督自身が再編集した『ゴッドファーザー(最終章):マイケル・コルレオーネの最後』が発表され、話題を集めた。今回は、そんな名画「ゴッドファーザー」シリーズに登場した名品を探してみた。

インドのカシミール地方に伝統的に伝わるカシミール紋様、いわゆる「ペイズリー」を進化させ、世に広めたエトロの創設者であるジンモ・エトロ。毎シーズン、このペイズリー柄を使ったコレクションを発表している。ネクタイ¥25,300(税込)、ショール¥36,300(税込)/ともにエトロ

1990年の公開以来、『ゴッドファーザー PARTⅢ』は何度も観てきたが、今回の『ゴッドファーザー(最終章):マイケル・コルレオーネの最後』をメンズファッションという視点から改めてじっくり観てみた。すると、登場人物のほとんどの男性が「ペイズリー」柄のネクタイを締めていることに驚いた。

冒頭のシーンでは、マイケルは黒っぽいスーツにエンジ色をベースにしたペイズリーのネクタイを締め、さらに襟元にカラークリップをつけて小さな結び目を立体的に見せている。第3作のもうひとりの主人公ヴィンセント(アンディ・ガルシア)が登場するシーンでは、黒のレザージャケットとエンジ色のシャツに、同系色のペイズリータイを締める。

前2作のトム・ヘイゲンに代わって、ファミリーの弁護士になったB・J・ハリソン(ジョージ・ハミルトン)は同じペイズリータイでもラウンドカラーシャツを合わせ、これまたカラークリップをつけている。マイケルと対立するファミリーのボスやボディガードまでも、みんなペイズリータイ。シナトラがモデルと言われるジョニー・フィンティーン(アル・マルティーノ)は、ジャケットの中にペイズリーのベストを合わせ、マイケルの息子アンソニー(フランク・ダンブロシオ)は総柄のペイズリーシャツを着る。まさにペイズリーだらけといった具合なのだ。

作品の舞台は1970年代から80年代にかけての話で、イタリアンファッションに世界的な注目が集まった時期だ。その象徴的なモチーフとして、ペイズリーも世界的に人気を集めていたと記憶している。ネクタイを締める時にカラークリップなどを使うのも、細身で繊細なイタリアブランドのネクタイを締める時に多くの紳士がやっていたこと。それらを劇中で忠実に再現しているのはないだろうか。

そのペイズリーで知られるブランドが、イタリアのエトロだ。創設者のジンモ・エトロはインドのペイズリー柄の起源であるカシミール紋様の流麗な美しさと華麗な色彩に惹かれ、「歴史と伝統から生まれた文化遺産を新しい時代に再生したい」と、19世紀後半に完全に姿を消していたペイズリー柄を蘇らせた人物。

84年にペイズリー柄の旅行バッグ、86年にホームコレクションを発表し、いまではメンズ、ウィメンズウエアを含むトータルブランドへと成長したが、「ペイズリー」はいまでもブランドの根幹にある。『ゴッドファーザー PARTⅢ』で何度も登場するエンジ色をベースにしたペイズリーをいま堪能するのならば、エトロ以外は考えられないだろう。

加えて言うならば、この作品は全編にわたってエンジ色が使われている。登場人物それぞれの衣装はもちろんのこと、インテリアまでもエンジ色がキーカラーになっているように見える。最後の舞台となるパレルモのオペラハウスのシーンを観れば、それは一目瞭然。後に起こる惨劇の血の色を連想させ、人間の本性や感情を象徴する効果を、このエンジ色が担っているように思えるのだ。

登場人物のほとんどはペイズリーのネクタイを締める時に、シャツの襟にカラークリップを付けてネクタイを立体的に見せている。これも時代性を表しているのだろう。ネクタイ¥25,300(税込)、シャツ¥42,900(税込)/ともにエトロ、カラークリップはスタイリスト私物

インドに伝わる伝統柄をイタリアの職人芸で再現した見事なペイズリー柄。

1968年にイタリアのミラノでジンモ・エトロが設立したブランド。テキスタイルメーカーとしてスタートしたが、いまではウエアや香水なども扱うトータルブランドに成長、人気も高い。

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問い合わせ先/エトロ ジャパン TEL:‪03-3406-2655
https://www.etro.com/

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