弱気な次男フレドがパーティで着用したチェックジャケットは、50年代に流行したリゾートウェアだった。
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一フランシス・フォード・コッポラが監督した不朽の名作「ゴッドファーザー」3部作。昨年末、公開から30周年を迎えた『ゴッドファーザー PART Ⅲ』を監督自身が再編集した『ゴッドファーザー(最終章):マイケル・コルレオーネの最後』が発表され、話題を集めた。今回は、そんな名画「ゴッドファーザー」シリーズに登場した名品を探してみた。
『ゴッドファーザー PART Ⅱ』(1974年)は、興行的大成功を収めた『ゴッドファーザー』(72年)と同じくパーティシーンで幕があける。ニューヨークから本拠地をネバダ州に移したコルレオーネ・ファミリーは、タホ湖にある大邸宅でマイケル(アル・パチーノ)の長男アンソニーの初聖体式を祝う盛大なパーティが開く。全米中からマフィアのドンたちが集まってくるが、そこに遅れてやってきたのが、ヴィトーの次男であるフレド・コルレオーネ(ジョン・カザール)だ。ヴィトーの血を引いているが、気が弱くて前に出るタイプではない。第1作で父親ヴィトーが襲撃を受けた時も、反撃どころかおろおろするだけで、およそマフィアには向いているとは言えない。
そんなフレドだが、このパーティで着用していたジャケットが実に洒落ている。大柄のチェックを使ったタキシードで、マイケルの息子のパーティに出席するのには絶好のジャケットなのだ。
『エスカイア版20世紀メンズ・ファッション百科事典』(スタイル社)によれば、「1956年には鮮やかな赤や大柄のタータン柄の素材がディナージャケットに使われ、流行した」と書かれている。このパーティシーンではマドラスと思われるチェックのジャケットを着た紳士も見受けられる。またマイケルが向かったハバナでのツアーガイドや、空港でマフィアのボスを射殺するロッコ(トム・ロスキー)が着ているのも大柄のチェックジャケットだ。
同じ百科事典には、「50年代の後半には大格子柄の薄手素材であるインディア・マドラスが夏服やリゾートウエアでは最も人気がある素材になった」と書かれている。作品の舞台となった年代とも合致する。この作品の衣装デザインを務めたセオドア・ヴァン・ランクルは『俺たちに明日はない』(67年)や『華麗なる賭け』(68年)なども担当した人。さすがの時代考証ではないか。
ここで紹介するのは2000年に創立されたサイのチェックジャケットだ。フレドが着ていたタキシードタイプではないが、着こなしに華を与えてくれる一着。サイはテーラリングを得意とする日本のブランドで、リネンを使った素材、柄の色合いやボクシーなシルエットが『ゴッドファーザー PART II』の舞台になった50年代を彷彿させる。マイケルやフレドが訪れたハバナのようなリゾートで颯爽と着たら、さぞや洒落て見えるだろう。
問い合わせ先/マスターピース ショールーム TEL:03-5414-3531
http://scye.co.jp/