ロバート・デ・ニーロの名演光る、若き日のヴィトーが着たバンドカラーシャツ
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一フランシス・フォード・コッポラが監督した不朽の名作「ゴッドファーザー」3部作。昨年末、公開から30周年を迎えた『ゴッドファーザー PARTⅢ』を監督自身が再編集した『ゴッドファーザー(最終章):マイケル・コルレオーネの最後』が発表され、話題を集めた。今回は、そんな名画「ゴッドファーザー」シリーズに登場した名品を探してみた。
『ゴッドファーザー』から2年後の1974年に公開された『ゴッドファーザー PARTⅡ』。この第2作は、前作の後日談と前日談が交互に進行するという独特のストーリー展開だ。後日談の舞台になるのは1958年から1959年で、主人公はヴィトーの三男マイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)。一方の前日談は、イタリアのシチリア島コルレオーネ村からアメリカに渡って来たヴィトーが成功するまでを描いている。前日談の舞台は1901年から25年までで、第1作ではマーロン・ブランドが演じたヴィトーの青年時代をロバート・デ・ニーロが担当する。
デ・ニーロは第1作ではソニー役のオーディションを受けていたが、殺し屋に見えてしまうので起用されなかったと聞く。しかしその時の印象が強烈で、続編では若き日のヴィトーという大役を獲得した。デ・ニーロは事前にシチリア島を旅して、完璧なシチリア人の言葉を身につけて撮影に臨んだという。
デ・ニーロ演じるヴィトーが、ニューヨークのリトル・イタリーで働いている時に着ていたのが、クラシックなバンドカラーのシャツだ。
14世紀にフランスのノルマンディーの貴族によって考案されたという説もあるが、そもそも20世紀まで、シャツは洗濯を容易にするために襟と身頃は別々につくられていた。ヴィトーはドンになるまではいわゆる労働者階級に属していたので、糊付けした襟を付けることなく、シャツをそのまま着ていたのではないだろうか。ちなみに第1作の『ゴッドファーザー』でも警官と対立するマフィアを殺したマイケルが、シチリア島に逃れた後に同じようなシャツを着ている。
今回紹介するのは、BLANKEY JET CITYの元ベーシストで映画好きでもある照井利幸が、2015年に立ち上げたブランド、THEREのバンドカラーシャツだ。作品の中で、ヴィトーは襟と身頃がコンビになったレギュラーカラーシャツも着ているが、この襟と身頃の色を変えたデザインがその時のシャツを彷彿とさせる。胸に入ったプリーツが、クラシックさを醸し出している。
同ブランドでは「Dead Rabbit」をモデル名にしたサスペンダー仕様のパンツをつくっているが、バンドカラーシャツにこのパンツを穿けば、若き日のヴィトー・コルレオーネを思い起こさせるスタイルの完成となるだろう。
問い合わせ先/THERE TOKYO TEL:03-6712-2255
http://there.tokyo/