映画の衣装を手がけた大御所ラルフ・ローレンのクラシックなスーツ【華麗なるギャツビー編】
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一1974年に公開された映画『華麗なるギャツビー』に登場する紳士たちは、白やピンクなどのいかにもなリゾートスタイル、またはタキシードなどのフォーマルスタイルでパーティに出掛ける。大きな経済的繁栄を迎えた“狂騒の20年代”のアメリカは、こんな状態だったのであろうか。そんなパーティでニック(サム・ウォーターストン)は初めて隣人のギャツビー(ロバート・レッドフォード)と出会う。ギャツビーは完全なるフォーマルスタイルだ。
ギャツビーは、「正直言ってパーティは嫌いだ」と話す。この屋敷も連日のように開くパーティも、彼にとってはデイジーを引き寄せるための作戦だからだ。そのパーティでギャツビーと友人となったニックは、翌日の昼食に招かれる。当日ギャツビーはダークカラーのストライプのスーツで現れる。ガレージにあった黄色のロールスロイスに一緒に乗り、向かったのはニューヨーク。ロングアイランドでは派手なスーツを着こなすギャツビーも、ビジネスミーティング(?)を兼ねた都会でのランチでは正統派なスーツを着こなすのだ。『華麗なるギャツビー』(76年)は、そうした1920年代の紳士のドレスコードがよく描かれた映画でもあった。
この映画は第47回アカデミー賞衣装デザイン賞を獲得する。賞を得たのはセオーニ・V・アルドリッジだが、彼女が男性の衣装の製作を依頼したのは、アメリカントラッドの大御所、ラルフ・ローレンだ。スーツやジャケットだけでなく、組み合わせるアイテムはどれも1920年代を感じさせる完璧なスタイルで、普遍性さえ感じさせる出来栄え。さすがラルフ・ローレンである。
ラルフ ローレン パープル レーベルは、ラルフローレンの最上位とされるメンズラインだが、今シーズンのコレクションにギャツビーが着用したスーツに似ているモデルを見つけた。クラシックなピークドラペルでシングルブレストのスーツだが、中に合わせたベストがダブル仕様。パンツのデザインもサイドストラップが付いたベルトレスのデザインで、クラシックさ満点。これでパナマハットにコンビの靴を合わせれば、まるで映画のギャツビー。ラルフ・ローレンが嗜好するスタイルが極めて普遍的で、1920年代のスタイルが、多くのメンズスタイルのお手本にいまでもなっていることがよくわかる。
問い合わせ先/ラルフ ローレン TEL:0120-3274-20